『伯爵夫人』(蓮見重彦 新潮社 2016年)

先週は体調を崩し、通常の営業が出来ませんでした。ご心配お掛けしました。

さて、今週は、蓮見重彦の三島由紀夫賞受賞の本書を読んだ。受賞時に、物議を引き起こした本書は気になっていたが、新年が明けてから一気に読んだ。

内容は、カバー帯に記された通り「エロス」「サスペンス」の物語だが、あまりにもあけすけで、サスペンスで必要な謎がないといえば皆無で、物足りない。しかし、知的な構成力が企みで、物語は多種多様な展開をしてゆく。退屈しない。

身体の極部を表す単語が、しかし、あまりもシンプルで透き通っている。エロスそのもので、「色気」が感じられない。

 著者の圧倒的な知的が、全体に行き届いていて、顔を赤くせずにはいられなかった。こそこそと、電車の内で読んだ。オススメはオススメ本である。「上流階級」の遊び、ともいえる手遊び小説。


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# by ihatobo | 2018-02-23 10:00

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# by ihatobo | 2018-02-21 10:20

『幻滅と別れ話だけで終わらない ライフストーリーの紡ぎ方』(北山修 吉本ばなな 朝日出版社 2012年)

 この長いタイトルに嫌気を感じながら読んだが、あとがきにこの二人自身が北山は嫌だ、吉本は馴染まない、と話し合っている。分らなくもないし、名前をめぐる違和感は誰しも感ずるが、二人とも表現者らしく、自分というものに誠実だ、と私は思った。

 本書は精神分析医である北山が、まず学生にするように講義を行い、吉本がそれに質問し応答する、というカタチで構成されている。途中理(工)系の北山らしく、同類のサン・テグシュペリ(「星の王子様」で有名)の文「愛することは、お互いに顔を見せあうことではなくて、一緒に同じ方向を見ることだ」を紹介している。

 彼は精神分析医なので、それを「共視」という用語を使って解説している。と同時に、分析家は患者が彼の「内側」で見たり聞いたりしたことを、分析家の前や人前で披露するものだから、分析家はたくさんの物語、絵、シーンなどをストックしている。

 そのなかで、前述で「一緒に同じ方向を見ること」というシーンを、小津映画『東京物語』の中に見つけ、同時に示してもいる。

 そして、それを紹介していたのが批評家、小説、学者など多面な顔を持つ連見重彦で丁度、彼の『伯爵夫人』(新潮社 2016年 三島由紀夫賞)を読んでいたので、互いにあい通ずるものがあり、次回、詳しくお伝えしたい。

 様々な知性があるものだ、ということが分かると思うので。


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# by ihatobo | 2018-02-09 15:07