今年1年の新刊を振り返れば、文庫化新刊を含んで三冊とさせていただきました。
①『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』(小学館文庫)
本書は聖書講読の碩学、秋吉輝雄に対するインタビューというワォーマットだが、多言語に訳されてきた聖書を丹念に読んできた現在の第一人者である秋吉の初の単行本で、地理・歴史=地政学の本でもある。
②三冊はいずれも理系本だが、数学の思考そのものが理系の成果であるから、本書は①③の証拠(物的形質)となる本で、現在の世界(宇宙)を読む場合の補助線となる。
③世界(宇宙)は共に人を含んで存在する〈環境〉だから、その内側(内臓)と外側(体表/感覚器官)が、実は同等に心を浮かび上がらせるという知見を展開していたのが三木成夫で、ページの裏側から心を押し上げ、ページが私の鼻先へ盛り上がってくる。
いつでも現在を生きる私たち一人ひとりに、希望を与えてくれる。心を押し上げる者は意識である。どこからともなく浮び上がってきたものを、各付けるのは意識である。その各付けられたものが心である。
心臓のフォノグラムであるシンを漢字にあてはめられたのが〈心〉。それは、いつからともなく浮び上がって私たち万人である。
先週末あたりから今その秋は短く終わり、いよいよ本格的な冬が始まった。
ところで、今年の中秋名月は追い名月と言われた上弦の端、とがった先が丸くかじられるようになる。
月の下あごの先端が欠けるのだ。追い名月とは、そのようにあごが欠けることをいい、光源と地球と火星が一直線に並ぶときに現象する。
もちろん、火星の影は地球にさえぎられ普段地球に届かず、太陽の衛星である二つの星が一直線から少しずれる時、この現象が観測される。
その陰の部分が火星の影であり、月の顎の欠けた部分である。
と言っても冬である。寒い。
前回、扱った角田光代『紙の月』(春樹文庫)も、立派な手引き書なのだが…