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『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』その3(マイケル・ピュエット&クリスティーン・グロス=ロー著 ハヤカワ文庫 2016→18年)

 さて、老子、荘子は読んだことがあるので、第5章「強くなるために弱くなる-老子と道(タオ)」をポイントにする。

 このタイトルは恐らく英語の発想で、第1回で述べたように、日本語でうっすらと分かっている、例えば外国人の会話の場面に出くわした時のように、具体的な内容は分らずともその場の雰囲気で、察しをつけられるのである。

 つまり、強弱の異なりを越えて老子の使う「道」を、ここで分りやすく引用したいと考えた成句なのだ、と私は思う。本文が、込み入って分かりづらいのも、こうした事情によっている。

 英語はコトバを選び定義し、順番を組み立てて文を作るから、ボーっと何か伝えたいなぁーとかいって、目つきや仕草を作るのとは違い、ひとつひとつを誤解にさらされながら延々と選び続ける。

 西欧では、それが当たり前で思いついたコトバを、とりあえず発する。そこから、会話が始まることが多い。そうなると、約束した時間が来たら躊躇なく、そこでおしまいになる。そこに、特別な意味はない。

しかし、私たちのコトバでは発した言葉が、そもそも意味がないこともある。英語人からすれば何をしているのだろう、という風に映る。そうした曖昧な会話を、実践していたのが老子で、何が事実なのかが不分明。それを、このピュアな頭脳の持ち主が、検証しているのが本書。

 そう、やっと私の文の流れで定義にまで辿り着いた。奇しくも、この第5章が、この本のピークであった。ここで一気に、帝国や権威に対抗する老子の思想がクッキリと浮かび上がり、私に訴える。

アメリカ独立宣言(大英帝国からの独立)にあるようにリンカーン、ルーズヴェルト、レーガンは「老子の哲学の一面を完璧に実行していた」

この部分の老子オリジナルは「道はいつもなにごともなさず、それでいて、なされていないことはひとつもない」だ。

この章の最終6行は、著者たちの立派な「独立宣言」である。感慨深い。


by ihatobo | 2019-02-22 10:48

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』その2(マイケル・ピュエット&クリスティーン・グロス=ロー 熊谷淳子・訳 ハヤカワ文庫 2016→18年)

 私たちは、いつ覚えたのか知れないコトバの連なり(成句)を、数多く持っていて、それに適する場面がやって来ると、ごく自然にその成句を発してその場面を区切ろうとする。

実際に発せられなくとも、ココロは何故かその成句で納得してしまう。

 調子よく事が進んでいるのに、突然思わぬメにあって、嘆息することになった、というような経験を「楽あれば苦あり」と言ってみたりする。

これは、自然に体験されたことの要約かも知れないが、出典があるかも知れない。今度調べてみよう。

 さて本書は、その出典にいきなり切り込んで人生というものを考えてみよう、という本である。それが、その1で述べたように、すこぶる面白い。どこが面白いか、というと、まず東洋思想を東洋哲学と表記していること。このことは二章に述べられている。

 ここでもいきなり、孔子とソクラテスを同じ地平におく。そして孔子の換骨奪胎(かんこつだったい)が始まる。「我田引水」ぶりがセンス良い。ソクテラス=プラトン、ドゥルーズ=ガタリの対話形式を借りて、論は快調に進む。第三章以下は、また次回にしよう。濃すぎる。


by ihatobo | 2019-02-15 10:15

『一切なりゆき』(樹木希林 文春新書 2018年)その1

 前回の文春ムックは、女性に焦点を当てた誌面だったが、ミュージシャンでエッセイストの内田也哉子を柱に据えて、筋の通った読み物になったが、彼女の母親が本書の主役。彼女のエッセー(秀逸)の裏付けとなる樹木さんのコトバが、ここに集められている。実に読み応えのある書物である。

 年に23回出喰わすのだが、本書も全ページを紹介したい。単なるダイジェストや要約された文は無用。書店で探して、買ってください。

 実際に会ったことはないけれど、樹木さんが亡くなって哀しい。

 読み終わって、本書も全ページを紹介したい。

 単なるダイジェストや要約された文は無用。書店で探して、買ってください。

 実際に会ったことはないけれど、樹木さんが亡くなって哀しい。読み終わって天を仰ぎました。立派な人だなぁと思った。

 私の齢になると親、親族を含め、亡くなる方が増えてくるが「あの世」で集会・宴会でも開いて下さい、と思いました。


by ihatobo | 2019-02-08 11:11

『週刊文春 WOMAN』正月号(文春ムック 2019年)

 文芸春秋が、新創刊と称して文春ムック「ウーマン」を始めた。正月号とあるから、月刊で発行されるものかも知れない。大手出版社の好調は、やりたい放題である。うらやましい。

その第一号のタイトルが「新しい地図」現在進行形。何やら思わせぶりな、というか意味不明、抽象的な文言。グラビアを開いて見終わる頃、その抽象的な文言に対応するような記事作りなのだな、と気付く。

表紙画を描いた香取慎吾と、これまた現在進行が好きな笑福亭鶴瓶の対談から、萩本欽一と香取、阿川佐和子と稲垣五郎と続く。この部分が「新しい地図」現在進行形。そして、トレンドな企画がドンドンとあり、いよいよ連載企画ページへ。

例えば後半「シェイクスピアは超古典だ」(杉村道子)のページは、国内の研究者が自らの成果を語ることで、日本とイギリスの演劇事情やシャイクスピアが活躍した背景と、その通時性を保証しているし、この時の演出家、役者と翻訳家が芝居の実際を語っている。

加えて、シェイクスピアが波及した先に、漫画家や一番の波及先である観劇する少女たちに言及している。ここでもタイトル通り「新しい地図」が描かれ、それが「現在進行」している様がレポートされている。

雑誌の肝は本来ここで、本誌は見事一貫している。

 続いてほしい。次号が楽しみである。


by ihatobo | 2019-02-01 10:43