一冊というのは彼の著作だが、それは実際の本だから、その実質は情報の寄せ集め、である。その寄せ集められた情報の重層が、フランスで昨秋売れ、ベストセラーとなった。つまり、彼が、その内容で批判している大金持ちに、彼は期待せずして成り上がっていたわけである。これほどの矛盾があるのだろうか。
しかし、この本に述べられている各論は、すこぶる興味深く、私は章タイトル・小見出しをサッと見ただけだが、十分に興味深い。興味を追って遂一検証すべきだが、私は研究者ではない。それでも興味深いのが、何故分かるのかと言われれば前置きなしに、興味深そうだからと応えるしかない。ということは本書は、文芸作品として私の興味をそそるという事である。
「マイ・フーリッシュ・ハート」(ビル・エバンス リムーサイドRLP 9399 1961年)が興味深いから、その別テイクが収録されている『ヴィレッジ・ハンガードのビル・エバンス全テイク』を手に入れて、聞く。みたいなものだ。私はエバンスに関しては研究者である。
そうやって別テイクを聞くと各ポイントが、こうも やられるのか、そりゃそうだ。あーも やるか、そりゃそうだ、とアドリブのライン違うために(そりゃそうだ)。スコット・ラファロとポール・モーシャンのタイミングが、今度はハッキリ異なる。かといって、このバンドはトリオを組んでいるわけだから、彼がこっちへ行ったからこーなった、というのではない。その場のタイミングを各々が造り上げているのである。(フーッ)
そう念頭に置いて聞いてみて欲しい。もう絶対、全然聞く度に違っている。
どれがテーマで、どれがバリエーションで、どれがアドリブなのか分からなくなってくる。
いやー、ジャズって永遠ッス。
▲ by ihatobo | 2015-02-27 10:37