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年末年始の営業のご案内

年末年始は36年間元旦のみを定休日とさせていただいております。
なお、スタンプ制度もポイント・システムもない代わりに、当店のオリジナル、ポスト・カードをこの時期お客様に差上げています。お近くにお出掛けの際に、是非お立ち寄り下さい。全品を一点づつ造り、新鮮なままお届けします。テーブルに置かれたメニューが、時と共に更に成熟してゆきます。その味の変化もお楽しみいただけると幸いです。

by ihatobo | 2013-12-28 01:22 | ニューズ

『真知子』(新潮文庫)

“プア充”という略称があるのを新聞で知った。
記事によると、現在の社会で生きる人々の九割以上が“プア充”だという。つまり、貧しいが生活はそれで充実していて“幸福度”は高いという。
この文化面の全面を使った記事を見て、私は俄には信じられなかった。自分の判断で「やることは全てやっている」ので、私はそれに価値を持っている。
しかし、それに意味があるかといわれれば、「後から付いてくる」と小さな声でいっていた。
それなのに、社会の九割以上が、“プア充”だという。驚いた。
さて、第二次大戦後まで生きのびたモダニストたちの作品に興味(つまり、私の祖父母)を持ち始めたのは、私の両親の老後/晩年をみていて、その親たちが明治、大正に、どういう青春を送り、その子育てで何を伝えたかったのか、それを知りたかったからだ。
幸田文、岡本かの子、宇野千代、樋口一葉ら、そして今回野上弥生子を読んだ。女性ばかりが並んだのは、物語に挟みこまれる衣、食、住に対する認識を知りたかったからである。
正月の料理、病院への見舞の衣服、来客のもてなし、“百貨店”のセール、室内のインテリア、家庭用の器具などの他に、言語(外国語、方言)、民族、他地域の風俗にまで各々のエピソードが知れる。
そうした私的、共同体の文化の他、絵画、芝居、音楽などハイ・カルチャーに対する若者の認識が読めてそれも楽しい。
たとえば親族のひとりが、教員として海外へ赴任することに、別の親族が「島流し」だというのに対して「学者らしい生活が出来れば」どこで研究、教育しようが、「同じこと」と主張する。
近代社会に至って、個の確立と、システムがここでもせめぎ合っている。製作年は1925年である。
現在の貧困にも隠れているであろう感染病(細菌、衛生)、窃盗、身分/階級による差別、排斥などに立ち向う主人公は、決して短絡せず、リベラル(寛容)に振舞っている。
社会学部長であった女性が、最近ある私学の学長に就任したが、野上の時代に生きた女性はしかし、国際性を特徴としながら、ホーム・マネジメント(家政)を柱に立てた私学を設立している。現在まで続くそれらの“女子”大は社会に役割を持つ人材を輩出している。
本作でもその逐一が語られていて、私たちの店のマネジメントに役立つと思った。

by ihatobo | 2013-12-27 23:09 | 本の紹介

『ハッピー・ランチ』(前野健太 フェリシティ)

年の瀬が迫り、私たちの店が長く売り、店でも流しているミュージシャンの新作が次々と入荷しています。

前回の寺尾紗穂に続いて、第一作『コンポステラ/篠田昌己』(パフアップ1990年)関連アーティストよる『星空音楽会』が、やはり、長い共同作業を維持しているオフノートから発表になりました。
メンバーは向島ゆり子(バイオリン)関島岳郎(チューバ、リコーダー)と、中尾勘二が、ソプラノ、クラリネット、トロムボーンを吹いています。
音が真っ当に鳴っているのにアルバム全体に静寂がたちこめている。
慎ましさと信頼が、そこにはあります。
乱暴にいえば、寺尾同様100年以前の地域ごとのフォーク・ミュージックが、その楽器を通して地域を越え出てゆく、響きを実現しています。
その意味で、2010年の夏以来、私たちの店で鳴り続けているZAZの3作目『RECTO VERSO』(仏ソニー 13年)は、彼女の声と共にロックのフォーマットを借りて、より情熱的に鳴り響いています。
加えて、今年二作目となる前野健太『ハッピー・ランチ』(フェリシティ)が、前作『オレらは肉の歩く朝』同様にジム・オルークとの共同作業で、より緊密で抜けた作品になった。
「肉」を「裸」とすれば「裸のランチですよ(笑)」と前野がつぶやく。
当店で売っています。よい♡っス。

by ihatobo | 2013-12-24 20:58 | CDの紹介

『版画 珈琲物語』その2

寺尾沙穂の『珈琲』(全6曲、リーダー作品)と、コーヒーの
伝播、伝来の歴史物語に想を得た、奥山義人による版画を
収めた映像(DVD)のカップリング作品に続き、その映像の
サントラ(寺尾の作・編曲、演奏)が、単独で発表されている。
これが実に良い。
俗な形容をすれば、百年以前の"現代音楽"黎明期の
レア物発掘作なのだ。
タッチが荒く、しかし、芯が鳴っている。強いていえばジャズ・
ピアノの音色である。ビート、ドライブ感が伝わってくる。
つまり、百年以前のポルカ、マズルカやワルツといった
パーティー・ミュージック。加えてマーチ(行進曲)あるいは
パント・マイムや人形劇の伴奏、無声映画、芝居の伴奏音楽など
身体を含む表現のステージが、この作品を聴いていると
目前にくり拡がる。俗語だがソニ(音)マージュ(像)である。
ただ、コーヒーの飲料としての発祥が、山火事におけるコーヒー豆
の焙煎で山羊が興奮し、かぐわしい香りが辺りに
立ちこめた、というのは、私達現場の人間に一蹴に
伏される筈である。
豆は洗われ乾燥され、焙煎され、グラインドされて湯を
注がなければ「かぐわし」くはならない。
強いてその発祥神話を解釈すれば、その山火事で
焦げたコーヒー豆に興奮した山羊が、足踏み鳴らして豆を砕き小便を浴びせ、
普段は臭い尿が、その時、丁度いい具合に湯を
注いだ状態になり、臭いどころか「かぐわしい」香り
となった、とすれば充分筋の通った"物語"になる…
ともあれ、本作品は上質の(音楽)演奏が収められている。
年末の推薦、いや、13年のコレ一枚である。

by ihatobo | 2013-12-20 21:27 | CDの紹介

『GOSICKⅢ』(桜庭一樹 角川文庫03年)

気になっていた桜庭一樹のその後を知りたくて『GOSICKⅢ』(角川文庫)シリーズを読んだ。『月刊新潮』でいつだったか三人で合作した短篇を読み「何だこりゃ」と『私の男』を読んだのだったが、その後に彼女の読書日記が出て、それは興味深く読んだ。
しかし、07年の『赤朽葉家の伝説』は途中で断念してしまった。私がそれらの“幻想怪奇ロマン”を読み始めた時期だったので、恐らく私には複雑に思えたのだろう。
論理的ではない、残酷や混沌、超常が、物語の中で起こり、時間の順序や空間の重層に紛れて、欠片が各所にちりばめられてゆく。それを“塔の上”から眺めている“知恵の泉”が、見事それらに「筋を通す」。
更に、物語は奥行きをほのめかしながら終る。
本書冒頭には『不思議の国のアリス』が引かれ捧げられている。

P.S. ジョン・ケージの「4分33秒」がカラオケに入ったらしい。ツイッター上で確認された、とのこと。

by ihatobo | 2013-12-13 23:33 | 本の紹介

[手入れという思想』養老猛司と『上司は思いつきでものを言う』橋本治

 「それを言っちゃあ、おしめえよ」コレは恐らく落語家がハナシの途中で段落をつける決まり文句だったと思うが、現実の場面でも何時しか覚えたフレーズでもある。自分では実際に言ったことはないが、カッコに入れてそれが意識されたことは確かある。
 本書あとがきで著者が述べるように、「だれでも考えるような、当たり前のこと」がここに書かれている。ただし、普段私たちがこのことを発話しない、あるいは出来ないことが見事著者によって表現されている。
 「作家」でも「科学者」でもない著者は、解剖学者である。
 本書発刊までの37年の間、ひたすら人の身体と向かい合って来た。もちろん医師免許もあり、生きた人の身体を診ることもできるのだが……。
 彼はその理由らしきものを述べているが、事の詰まり、彼が扱っている死体は、彼が手を下さなければそのまま当然変わることがない。もちろん、保存するための処置はする。今の技術でも2000年はそのまま変わらないという。が、処置をするのも彼である。“技術でも”とは、実際に保存の状態がたまたま良かった死体が発見され、それが2000年程の年月を経ていたそうである。
 だから、彼は何かを創造したり、実証したりしない、「表現者」である、という。
 それに私はどことなく親近感を持っている。
 しかし、私はその「表現者」であるが、喫茶店の経営、責任者である。
 そこで、積んでおいた『上司は思いつきでものを言う』(橋本治、集英社新書 04年)を読んだ。
 この本が提示しているのも至極シンプルで、「上下関係」のある場面の伝達では、相手方が、よく分るまで、相手を見極め努力することが、大切だ、と筆者は繰り返し述べる。
 この店の上下関係にないスタッフ間、お客様とのコミュニケ―ションでもこの事情は同じで、相手方が「知ってる」ところまで親切、丁寧に、時間をかけて発話しないと、ごく簡単な伝達事項でも伝わらない。
 本書ではその事情に分け入って、こと細かに、時には方便としての下品を使いながら、「上下関係」の当事者に向けて、上手に話を進めるような手管を詳述している。
 私もその「当事者」である場合もあり、役に立つ本だ、と思った。

by ihatobo | 2013-12-05 09:59 | 本の紹介