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『コチネの終わりに』(平野啓一郎)その3

 本書は“恋愛小説”のはずだから、さっそく恋人ふたりの恋はどんななのかを読みたかったのだが、ようやく第6章になって、それの展開にさしかかってくる。

 もちろん、それまでにも恋のやりとりはあるのだが、どちらかといえば頭でっかち、よく言えば成熟した成人男女のやりとり、愛や誠実さの交換が述べられていて、今ひとつ実感が伴わなかった。

そして、作者の意図は、その交換を持って愛の定義をしよう、と考えているようだった。

そう思って読み返すと、愛の様々な状態がスッキリと了解される。それ程に愛は複雑で生き生きしている。

 『定義』の活躍は、数学とその延長の科学に限られるが、彼はそれを文学に持ち込もうとしているように思える。結果、本作品は人文科学の書となっている。この先も、目が離せない。(つづく)


by ihatobo | 2020-01-10 10:54