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『小箱』(小川洋子 朝日新聞出版)

 恐らく、擬人化された小花や欠片が音を仲介にして、その風味を言い表して第3章は終わる。そうやって、小説のお膳立てが整うと次の章で、その重要なはずの建物が一気に爆破されて、『もうそこには、なかった』。

失われた命や、それが宿っていた建物が消えてしまっては、物語は続かない。

つまり、ここまで通底していた、その惜別の想いが爆破されてしまうのだ。

この部分は喫茶店に似ている。一組のお客様が用を済ませて立ち去った後にも、その出来事の余韻が目に見えぬとも店内に残るものなのだ。

それまでのお客様たちの残り香というか、それが店内に匂い漂う。あれは記憶なのだろうか。

 こうしたプロセスがあるから、店はバラバラにならずに、統一された印象をお客様に与えることが出来る。基本、店はお客様に向かって開かれており、そのために私たちは掃除を始め、メンテナンスに日々、精を出す。

店とは、ここでいう小箱なのかも知れない。

4章は掃除をして、空気を入れ換えると、「一人男性が渡り廊下を渡ってきた。」

 さて今度は、どんなお話が展開されるか興味尽きない・・・(つづく)


by ihatobo | 2019-11-29 10:29