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『ニューヨークで考え中』(近藤聡乃 亜紀書房 2015年)

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秋になって出会ったものが印象的だった。①森美術館の展示:塩田千春の“魂がふるえる”②川田綾音の詩③近藤聡乃のコミックエッセイ“ニューヨークで考え中”いずれも海外を拠点に創作を続ける、日本人女性アーティストの作品だ。

塩田千春はベルリンを拠点に活躍するアーティストで、記憶、不安、夢、沈黙など、形の無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られている。六本木ヒルズの53階、というスタイリッシュな空間とは裏腹な、パフォーマンスを映像にしたいくつかの作品に衝撃を受けた。ヨーロッパで作成されたものなのだが、日本のアングラ芝居?というようなドロドロした狂気じみたものだった。塩田千春のテーマであるという「不在の中の存在」が、掘った穴、や、土、という素材を通して目の前で何度も再生された。今もその衝撃が忘れられないでいる。

表参道にあるスパイラルビルの「詩の教室」を受講した。講師は詩人の峯澤典子氏。そこで川田絢音を初めて知った。2015年、74歳の時『雁の世』で萩原朔太郎賞を最高齢で受賞した詩人である。20代の終わりから、現在もイタリアに住むが、あちこちヨーロッパを転々としたようだ。

川田絢音の詩集を一冊買ったが、気がつくとページをめくっている。塩田千春の作品から受けた衝撃と同質の何かを体感しながら……「不在の中の存在」を言葉にするとこうなるのか?川田絢音の詩に触れると痛みが伝わって来るが、その痛さを求めている自分に出会うことが出来た。

近藤聡乃の『ニューヨークで考え中』はアーティストである著者が、文化庁の「新進芸術家海外研修制度」の研修期間終了後に、そのまま住み着いてしまった、ニューヨーク生活のあれこれ、を描くコミックエッセイである。

日々のちょっとした出来事や疑問も外国暮らしであれば、何かと事情が違ってくる。その何かと違うあれこれが、さらり、と描かれていておもしろい。世界一有名かもしれない都市、ニューヨークで暮らす著者からは、気負いや西洋かぶれの類いは感じられない。定番の観光名所も登場せず、あくまでも等身大のニューヨーク暮らしが描かれているのだが、それが新鮮だった。


投稿 木花なおこ


by ihatobo | 2019-11-28 22:15