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『劇場』(又吉直樹 2017→19年 新潮文庫)

 前回『ガラスの街』(ポール・オースター 1985年)は、間違い電話から始まり、見知らぬ老人と言葉を交わすまでを物語ったものだったが、本作では又吉本人と思われる語り手が、新宿から明治通りを南下して原宿に着いたところで、見知らぬ女性に声を掛けるところから物語は動き出す。

 二人の出会いは偶然なのだが、本書との出会いも偶然で、気になっていた本書が文庫化されたので読み始めた。

もうひとつの偶然は、私が中学生の頃に、東京タワーが出来たというので大塚から目白へ、そこで山の手の崖から目的地が見えた。とにかく、それを目指して明治通りを南へ向かったのだ。

 原宿の交差点まで来て、今度は左を見ると、また東京タワーが見えた…

 本作主人公は、そこで駅へと向かい恐らく同じ頃、出来たオリンピック村のある代々木公園に入ったのだと思う。

さて、物語は歩いて30分くらいの下北沢に舞台を移す。

先回紹介した吉本バナナのエッセーも大半が下北沢の台だったが、確かに、この街には文芸、芸能人、監督、絵描きが多い。そんな中で、著者は芝居の脚本家として、逐一芸能論、芸人論を織り込めながら物語を進めてゆく。

そのあと、しばらくカップルの、どこにでもある日常が書かれて…

いや、とにかく面白い。ドキドキ、ヒヤリとさせられる。通底しているのは、主人公のハニカミ、優しさ、誠実があって、心地良く読み進んだが、最終的には女の愛にぶつかりそうになったので、そこで止まった。

また今度読もう。自分のなかの記憶とコトバが、浮かび上がって来てしまった。

多分、そこは自分が整理できてないし。(つづく)


by ihatobo | 2019-10-04 09:12