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『下北沢について』(吉本はなな 幻冬社文庫 2016→19年)

 また、新聞コラムから始めてしまって申し訳ないが、このコラム大変おもしろく、私たちの店でも度々見かける女性を扱っている。

決して女性を嘲ろうというわけではなく、女性がひとりで居酒屋に限らず、店に入るのは、ある種の勇気が必要になることを、このコラムは教える。吉本さんの『キッチン』(角川文庫)は、同時代の新しい書き手の中では、最初にのめり込んだ作家で、78作目くらいまでは読んでいた。懐かしい。

 文中には知っている店やミュージシャンも出てくるし、今年、フランスの出版社から写真集が出た高橋恭司を「先輩」と呼んでいたことも知っている。吉本さんは、小説でもそうだが、「事実」を認め、承認、肯定する人で、その粋組みの中で、人や出来事を回顧してゆく。実際に、読み手がその人や出来事に、遭遇したかのように描くのが巧い。

そして、私にしてみれば私自身のことや、この店で起った事柄が様々に想い出されて、ホント有難い本であった。巻末の「裏話」5話も含めて、「縁」が造り上げる共同体だとは言えない集団が、離散集合して大きな物語が、出来上がっていくようにも感じた。

 得がたい本である。


by ihatobo | 2019-08-02 09:29