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『私たちの国で起きていること』(小熊英二 朝日新聞 2019年4月)

 著者の元には、毎月60冊ほどの雑誌が届くそうだ。それらを読んで、重要だと思った所にラインを引き、ページに付箋を貼る。もちろん、新聞やウェブサイトにも目を通す。2011年4月、朝日新聞の論壇委員を務め始めて以来、16年4月に論壇時評の執筆を担当することになっても、この作業は続く。
 その8年間に合った様々なことから、社会の変動をみつめ、その変動の表れとしてそれぞれの事象を位置づけるように努めた、とある。
 この国が(世界が)ものすごいスピードで変化していることは、誰もが感じていると思う。人々の個人分化が進み、関係の安定性が減少していく流れ。これは人々が自由になって行く変動であり、世界に普遍的である。本書では、この変動が日本でどう表れているか、戦後の日本で形成された「国のかたち」がどのように揺らいでいるか、という2つの関心を通奏低音としている。

 とても読みやすく、読んでいる間は「そーだそーだ」と物事が分かった気になる。が、著者は分ることも難しい議論も期待していない。
 多くのことが現代に合わない古い枠組みで進められていることに疑問を持ち、自分の認識が現実に即しているかを謙虚に吟味すること。それが現実を変える第一歩だ。と言っている。人がいかに個人的に物事をとらえる傾向にあるか、についても言及して。
 もちろん上から目線などではない。私が長年疑問を感じていたこと、たとえば、勇気を持とうと漢然といわれるが、その勇気は何だろう?と、その疑問に答えてくれています。気概である、と。

 素直にのんきに行きたい方向に一歩を踏み出した時、必ず感じる壁や無力感。大袈裟に国のことなど考えていない私たちにも『私たちの国で起きていること』は決して無関係ではない。著者は、人はデータでは動かないという。自分の実感をないがしろにせず、対話、参加を心がけること。それなくしては、何も始まらない。


by ihatobo | 2019-06-14 10:01