『晶子曼陀羅』(佐藤春夫 講談社 ミリオン・ブックス 1955年)

 宮澤賢治を応援した作家が、晶子の「像」を描こうとして関連書籍を読み漁り、彼女の詩(歌)を詠み込んだ末の本作は書である。いわば、足で歩いて取材した物語、その情熱が発散する本。

たとえば、今回読んだ『どこでもない場所』という作品は、そうした足で歩いたのではない、アタマで計算している。というもので、全く面白くない。「迷い巻き込まれてきた小説家」と帯にあるが、そのままが出ちゃって…アタマデッカイは恥ずかしい。

佐藤にしてみれば、晶子を対象とし主人公に据え、エピソードを選びながら、その背景を探る、そうして登場人物が深まり、愛のもつれによって彷徨の旅に出る。その結果が、より対象を複雑にし、主人公は「一身の事にかまけて」自分自身の人生の見通しを得る。

作中に、度々出てくる故郷や我が子を頼りに、人の道を歩んでゆく。しかし最大の獲物は、彼女の矜持の誇らしさだと、私は思った。カッコイイのだ。

佐藤は、それを伝えたくて、長い時間を掛けて、作品に向き合ったのだろう。それにしても、女という生き物は、恐ろしくも愛らしいものである。


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by ihatobo | 2018-11-09 10:34