『運命の歌のジグソーパズル』(加藤登紀子)その2

 本書を読むうちに様々に想い出した事柄の中で、当然〈歌〉に絞ることになるが、これがまた延々と続いてしまう。著者は、比べられぬほどの激動を生きて来たわけだから、私より100倍は大変だっただろうが、私も必死にレコードを探して、店で心おきなく聴いて頂けるようにやって来たのは、敗けないつもりだ。

 その中で筆者と坂本龍一のアルバム『愛はすべてを赦す』(1982)は特別で、ずいぶん長い間、お客様と共に楽しんだ。このアルバムの中の「今日は帰れない」がいい。切ない歌で、何としても生き抜く勇気をくれる。

 しかし、3~4年前に、このアルバムを友人に貸してしまった。“ダビングして返す”はずだったが、手許にはない。CDが出ているはずだが、こういう状況では無精に聞きたくなるものである。この曲は良い。

 最近になって『虹の豚』のワンシーンで筆者が歌う、あの歌もいい。映画の時は気が付かなかったが、あの歌が加藤登紀子だった。どこかヨーロッパの歌手だろう、くらいに思っていたのだが、本書でガツンと衝撃を受けた。

 他に彼女は技術進展に関心があったようで、ソノシート(薄いセルロイドのレコード)オープン・リールのテープレコーダの単語も出てくる。そして、しいたげられた兵隊、コサック兵が、もともと自由の人、冒険家、放浪者を意味するコトバからきていることも教えてもらった。

 大沸次郎の『パリ燃ゆ』についても教えられた。彼女自身が“プラハの春”“パリ五月革命”といった事件を間近にしてきたから、読み応えがある。

 彼女は私より6歳年長だが、私自身の関心のためか遠くない、むしろ自分のために事柄が記されていて、繰り返し読もうと思った。


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by ihatobo | 2018-08-03 08:50