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『司馬遼太郎がゆく』(半藤一利、山折哲雄ほか、小学館6/11 2018)

 以前、紹介した松岡正剛/佐藤優(『読後術』中松新書)のお二人の読書量もすごいが、本書著者は『竜馬がゆく』を書く際に集めた資料(書籍、雑誌や絵巻物など)が合わせて1トン、3000冊だったそうである。金額にして(1960年代前半の価格で)1000万小さな家なら34件が買える値段。

 しかし、集めただけでは司馬の記念図書館をつくるだけになる。それを“全部読む”そうである。いやはや…彼は子どもの頃から本好きで、近所の図書館は読み終わり、就職してからも担当の寺院の書庫、大学の図書館と次々に読了してゆく。

 いや、私は店のお客様で、そういう方を知っていて、わずか「コーヒー、一杯飲む」あいだに、単行本の他、書類なのか分厚いコピーの束を次々と漫画を読むように、さっさとページをめくって行くのを見ている。「カメラなんですよ。ページを写し取っているんです。」

 『街道をゆく』(197196年 「週刊朝日」連載)の最後の担当編集者・村井重俊が、井上ひさしの言葉として引用している。

 事実、読後に写した写真を読んでいるかのように、空を見てしばらくの間、ボーとしているのである。奇妙な何か美しい、それは風景であった。本書は言わば、執筆者それぞれが写した司馬の写真を文字にした、とも言えそうである。

 改めて、彼の作品を読んでみようと思った。


by ihatobo | 2018-07-06 09:24