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『読む力』(松岡正剛/佐藤優 中公新書ラクレ 2018年)

 身につまされる物語が続いたので、新たな物語を求めて、本書を読んだものの、本はどんなカタチであってもひとつの物語が綴られているものだ、ということを改めて確認した。タイトルにあるように、古今東西の名著が150冊紹介、論じられている。

 そのうち私が読んだことのある本は10冊足らず、うーんと唸った。もちろん名著であるから、書名筆者はもう少し数が多かったが、実際には読んでいない。彼らは、読んでいる本の数が桁外れなので、一冊に情報を短く圧縮しているから、密数のいう「横超」が出来る。

 松岡 ― 今のように、佐藤さんの専門ではない事柄を佐藤さんの表現で語ることが大切です。―

 この箇所は、思想/信条を語り合っていたのに、佐藤が突然、恐竜についての最近の新解釈を披露した時に、松岡が返した発言。

 つまり、自分の現在持っている知見で新しい事実に対処することが、その発言者にリアリティを与える、ということだ。「横超」を持ち出さなくても、こうした書物に対する真剣さが最大の特徴である本書には、私程度の本読みにまだまだイケルという意欲を与えてくれる。

 上の会話は図鑑も本だ、という流れに繋がれていくのだが、図鑑や辞書に入り込むと、出てくるのがしんどいので、今回はとりあえず。ということで、お茶を濁しておこう。

 その佐藤優が今月、新刊を出した。今度は小説である。読んでみたいと思った。


by ihatobo | 2018-05-18 07:43