『あんこの本』(姜 尚美 文春文庫 2010→18年)

 著者は「政治」「政治思想」を研究する社会科学の学者だから、社会に起きる諸現象を、その研究対象にしている。そのために、守備範囲が広い。

 本書で扱われるのは「あんこ」だが、学者であるから、まず物質としての「あんこ」のいわば定義をしてから始めている。

その組成がでんぷん、繊維質の他、それに付き物のビタミン群と述べたあと、その「小豆」の歴史、分布と続き、その社会的な役割(元来が医食同源としての薬効について)と、その地域ごとの呼び名、歴史的な変遷と詳しい。

一部分を紹介すると、牡丹餅と御萩は地域別の名ではなく、あんがボテっとした固まりだから牡丹で、御萩は丸くならしてあって荻の葉に似ているから、という通称ではないか、という。はぎは萩、ボタは牡丹だという。

 是非、読んで頂きたい。安値であるし。それこそ「豆博士」になれる。棚から牡丹餅。

呼び名というコトバを使ったが、著者は「小豆」「あんこ」に関する文献を猟歩しているからで、餡は古くは~という記述が続く。「あん」漢字を書ける方は、そう多くないはずだ。

 本書は、旅のガイドも出版している版元が最初なので、大変、読みやすく社会科学に必須の「フィールド・ワーク」も経ている。綿密な本である。もう一回、安いし!


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by ihatobo | 2018-05-11 10:16