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『百日紅』(杉浦日向子 上下巻 ちくま文庫)その2

 そういえば、実家の庭に、さるすべりの木が植わっており、夏の休みに帰ると、うす紅色の花が散っていたのを想い出す。

 本書は、そのさるすべりがタイトルとなっているが、物語の全体を過不足なく、言い当てていて良いタイトルだと思う。
 夏の暑さと、ポトリと落ちる描写、何故か凛風が吹いているようだ。この木は芝をポカリとくり抜いて立っていたのだが、その色合のコントラストも美しい。だが、実際に散ってみると芝の中に隠れてしまう。なんと健気な花か。
 その木にも、主を喪なくして今は、もうない。寒風に晒された更地である。年明けに、そこに暮らした両親を想う。淋しい。
 確か縁側に腰掛けて、陽に当たっている写真が残っているはずだ。落ち着いたら探してみよう。

 本書は激しさと共に、しっかりとした人々の心情をうたい上げた名作である。
 アニメーションによる映画も観てみたい。

by ihatobo | 2017-01-08 22:54