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『片意地へんくつ一本気』(橋本 治 文集文庫 1997→2002年)

 この作家は以前から気になっていて、雑誌などにエッセーが載っていると読んでいたが、先回の『夜』の微に入り込む人の心情の描写に感服し、また別の作品ということで、本短編集を買ってきた。この連作短編集のタイトルである「片意地へんくつ一本気」が、冒頭に据かれた表題作なのだが、副題によると伊豆下田のうなぎ屋・風流噺である。
 それで読み始めると、話の舞台は何とジャズ喫茶である。その名も名盤「ブリリアント・コーナー」(セロニアス・モンク 1956年)である。
 文中には枯葉(キャノンボール・アダレー)MTQ「ジャンゴ」と名立たる名演が出てくる。それらをクール・ジャズと言っているのが気になるが、本作の本質には関わりない。本質は副題の「風流噺」にあり、そこが何ともかわいい。

 思えば、ジャズとは風流以外に何物でもないのだ。偶然とはいえ、大変得をした気分で読み終わった。その作家に、ますます興味を持った次第である。

by ihatobo | 2016-05-20 10:03