『モッキンバードの娘たち』(ショーン・スチュアート 東京創元社 2016)
さて、物語はクライマックスを迎えハッピーエンドだった、と言いたい所だが、いくらハッピーエンド好きといっても、現在のアメリカには、そんな勢いはない。それを、反映してじれったい程にうす暗い、ゆううつな感じな結末であったが、それはそれで良としよう。
それにしても、主客入り乱れる主人公の煩悶は、半端なくかろうじて、自分が保たれて終わる。この件も良しとしよう。しかし、怖い物語である。幾度となく本を投げ出さんとばかりに怯えた。何なんだ、この<乗り手>たちは。この訳語の乗り手だが、おそらくライダーだろうと思う。
では、何に乗っているのかというと、馬でも車でもない、彼らが乗るのは人間なのだ。怖い。
気を許して筋を追っていると、その場面の人物にライダーは、乗り移っている。支配されているのだ。怖い。だが、本書は掛け値なく面白い。カナダのシンガー・ライター、マデリン・ブルーの「ケアレス・ラブ」である。主人公トニは、逞しいが可愛い。
その同じ意味で、もう一曲、著者にヒントを与えたに違いないのだが、トム(ジョビン)&エドゥ(ロボ)のアンジェラである。
by ihatobo | 2016-03-29 18:40