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『BILLIE HOLIDAY / Stormy Weather』(2000年 IMC ポルトガル)

 レディデーを聴き始めたのは学生の頃、二十歳前だった。
 アルバート(アイラー)もジミ(ヘンドリクス)も三島(由紀夫)を、まだ生きていた頃のことだった。ラジオからは、ビートルズやカラヤン、サッテモが流れていた。
 池袋に部屋があったから、ジョン(コルトーン)が亡くなって(1967年)ジャズ喫茶を終店してしまった店主や、(浅川)マキさんや(三上)寛さんが、店や映画館、大学のキャンパスで歌っていた。
 はっぴいえんどの前身ともいえるエイプリル・フールや、岡林信康が歌いに来たこともある。どんな契機で(ビリー)レディデーを聴き始めたかは覚えていない。ジャズ喫茶にたむろしていた若者たちから、誰よりも彼女の名が伝えられたのだろう。
 芝居や映画、ポエトリー・リーディングス、詩人、哲学徒、鉄工職人、絵描き、美術家、そして漫画人、出版人、編集者印刷工、ライターと多士済々、雑多な人々が、そこジャズ喫茶には集まっていた。もちろん、ジャズ・ミュージシャンや現代音楽を学ぶ者、パフォーマー、画材屋、書店員、研究者、教員、レコード会社員、役所勤務・・・それらの人々が、唯一共有していたのがジャズである。

 しかも、そのジャズの代名詞(代表)としてのビリー・レディデー・ホリデーの個有名である。今となっては「珍しい」とは言えないビリーのレゴードが、そのジャズ・バーの全レコードという店でさえあった。
 その店で、あらゆるソース(レコード)を所有しており、私たちは、ちょっと入りずらい雰囲気であった。中からは音は聞こえるのに、入り口の鍵が閉められていたり。そこに足繋げく通っていたのが、阿部薫というアルト吹きであったのを、私が、この店を始めてから知った。
 本アルバムはレディデーの『レディデー』(CBS)と同時期のライブ放送を含む完全盤(?)でレパートリーは『レディデー』からのもの。

 秋の陽の降り注ぐ午後に、私は楽しんでいる。まるで、彼女が健在で夜のステージの為のダルいリハーサルの場に、いるかのようである。

by ihatobo | 2015-10-09 18:18