人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『陽光と静寂』 マドレデウス

 曖昧な雨雲を透いて、はるか上空にうろこ雲が見える。上空は秋なのだ。それを見て、久し振りにアドレデウス第4作『陽光と静寂』を聴いた。
 本ブログで紹介した時も、歌詞の訳を見たはずだが、今回見てみると真に時宣に合った内容が歌われているのを知り、驚いた。

     ―― 戦いの残した光栄の惨めなことよ(・・・)
                地上には、すでに平和の影すらない
                         そこにあるのは、恐怖だけだ ――

 この歌は、94年のアドレデウス第4作である本アルバム(タイトルの言語は平和の塊の意)に収められているが、彼らは一貫して愛と平和を希求する歌を作っているから、ジョンとヨーコを引き合いに出すまでもなく、歌というものの本質を、ずっと生きている。
 アドレデウスのコトバは、そうした歌の本質を歌のように出来ており、その民俗音楽はファドと呼ばれ、人が運命に翻弄されながらも、そこから脱することが出来ない深い哀しみにも関わらず、力強く生きる希望を、彼らは歌う。
 本アルバムには英語詞も含まれ、そういった晋偏性に立脚して、世界へ打って出ようという姿勢が伺える。実際、録音から三ヶ月後にはブルーノート・レーベルを通じて、欧米発売になったという。
 彼らはデビュー以前、リスボンのウス教会に集まっては、歌っていた。元々は、ペデロ・マガリャンエスとロドリゴ・ムーノスが1986年に結成したバンドで、翌年、ウス教会の名前をもらい、ウス教会のマドレ(母)をバンド名にしている。
 本作を引っ張り出した昨日、さっそく問い合わせがあり「コレ、買います」という。身成り正しい年配の男性であった。

by ihatobo | 2015-08-21 10:10