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『エクリチュールの零度』 (ロラン・バルト ちくま文芸文庫 1953→1999年)

 彼の著者では、『神話作用』を詳しく読んだが、もちろん素人購読である。しかし、続く『表微の帝国』は扱われているのが日本という具体であり当然論は抽象を逃れないが、ほとんど、どの章も思い当たる論考であり、私が、この本を読むまでは意識していなかった心性を、見事、言語化して見せてくれて大変ありがたかった。

 若い時季に『いきの構造』(九鬼周造)や『風士』(和辻哲郎)を親の本棚から引き出して読んだものの、コトバとしては自分を言い当てるものではなかった。
 その頃に著者であるロラン・バルトが来日し、本書の訳者である宗 左近が恐らく、どこかで彼について発言をし、それを私は、伝え聞いたのであろう。強く興味を持ったのであった。
 その時期の数々の著作の元になったのが、ロランの第一作 『エクリチュールの零度』である。こちらは正真正銘、難問な用語を造り上げての理論書であるから、その用語を、うっすらとでも把握していないと、チンプンカンプンである。それでも解説書を頼りに読み進めていると段々と、その抽象としての立論が掴めてくる。どの段階からでも、その抽象/具体に入り込めるから、気長に読んでみることをオススメする。

 さて七月中に、これから当店の核になっているムズカシ本を随時、紹介・販売して行きます。第一弾は宇田智子の『本屋になりたい』をラインアップしている、ちくま書房のちくまプリマ―新書から。小川洋子、河合早雄などの他、同社から20種を選んでフェアをやります。ご期待ください。

by ihatobo | 2015-07-17 18:54