『両性具有の美』(白州正子)

 優先席に母娘らしき二人が座っている。娘の方は、おそらく50代後半だろう。初めは母親を座らせて、自分は、その前に立っていた。母は隣の席に座れという風に、シートを指して娘を促す。
 電車が駅に停まると、母を除く、全てのシートが空いた。そこで娘は母の隣に座るが、よく見ると大荷物を背負っていて、腰かける程度である。電車が次の駅に近づき、減速を始めた。この駅では、新しい乗客は、やって来なかった。
 四つのシートの端に、母と娘の二人だけになった。娘は、ようやく体を据って母に何か小声で話しかける。しかし、母は薄く目を閉じただけで、視線は動かさない。背筋を伸ばし、対向の窓外に目を送っている。私は次で降りるために、ドア脇に進んだ。

 男女の境目が、どんなに深いものであるかも知っていた、白州正子。(酒井順子)次回は、その彼女のエッセー集『両性具有の美』(新潮文庫)に探りを入れてみよう。対面に座っていた母と娘が、互いにそうであったかも知れないでは、ないか。

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by ihatobo | 2015-07-14 10:11