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『本屋さんになりたい――この島の本を売る』(宇田 智子)

 読んだ読んだ、あァ、くたびれた。何故って、文字面の10倍くらいの本当に知りたい情報が、詰まっているから。著者と共に、古本屋一軒、造ってるぐらいくたびれた。読んだ人のひとり一人が、この本を読んだことで、店一軒造ったのと同じぐらいの時間を、体験することになるだろう。しかし、それは、この著者というよりも、この本がそうさせるのだ。
 その本書のタイトルの、ひとつ目の意味が分かることになる。他人に働きかけず、その意味で罪のない生き方を選んだ筆者だが、特に意識した訳ではないが、たまたま「本が好き」になったがために、本に関わって自らの生計を立てたいと思うようになる。私達の店でも、この本を売りたいので版元に電話してみよう。

 それから、「同じ印刷された紙」なのに一方は本、片方は紙幣というところで彼女の前に難問が立ち現われ「自由で、少し孤独でもある」本屋に、のめり込んでゆく。「頭だけでも、足だけでも出来ないからこそ」楽しくなってしまう。(自分が)「やるべき仕事が見えた」ような気になって、彼女は張り切っている。
 2002年に本書の舞台<古本屋ウララ>が始まる。彼女はその舞台を壊してしまうことまで想定するのだが、もはや時既に遅く、彼女は「本屋さんに」なってしまったのでした。メデタシ、メデタシ。(終)

by ihatobo | 2015-07-06 11:43