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『知の収穫』(呉 智英 メディアファクトリー93年)

 本書は二部構成で、一部が書籍、二部はマンガの紹介本。
 マンガ紹介の冒頭は『鳥獣草魚』(斉藤なずな、小学館文庫)
 切ない読後をもたらす作品。という描線は、ジョージ秋山に似ている。
 同じ見開きに、漫☆画太郎の『珍遊記』(集英社)が紹介されている。描線は、つげ兄弟、林静一を思わせる。
 荒唐無稽、奇想天外な西遊記のパロディ作品という。それを「自分の物のした」は呉の評価。
 はじめに、で、一 本は時代を映す。とあるように、本書は”時評”本である。年次は87-92年の作品を扱っている。一方、一部冒頭に紹介されているのは『イメージの回廊』(坂根厳夫 朝日新聞社 85年)国際化社会で重要な”異文化コミュニケーション”だが、ここに異文化によるのは、イメージ情報が異なることに注目して、コミュニケ―ションを成就しようと、著者は指摘している。
 ユニセフの下でマラリア感染防止活動に従事していた彼は、現場で貼ったポスターの虹のサイズが大変拡大されていた為に、それを眺める人々には「バッタ」としてしか伝わらないことに注意を促している。
 といった現場の報告をまとめた体験を中心に数十冊が、取り上げられている。
 そうした視点から眺めてみる読書論もあり、大変に説得力のあるエッセーになっている。
 文庫化されている筈なので、是非読んでみて下さい。

by ihatobo | 2014-11-23 10:14