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「城の崎にて・小僧の神様」(志賀直哉 角川文庫 1917→改版2012)

 橋本治を読もうと予告したのだが、新刊の出た作家の旧作を読もうと考える人々は、やはり数多くいるらしく、版元で「厳しいですね」(書店員)ということになり、こちらも気になった志賀直哉『城の崎にて・小僧の神様』を見つけ、今回もまた「その前にこちらから」を読んだ。
 「城の崎にて」は、中学の教科書で読んでいる。
 記憶を辿ると、主人公が鶏小屋で、卵を収穫し調理を手伝った、という覚えがあり、当時、親の社宅に暮らしていた我が家でも卵を目当てに鳥店へ買いに行った。
 しかし、店主のススメでウズラかチャボをゲットし、庭で飼った。
 友人の家では、庭が広く犬と共に鶏の囲いを造って“放し飼い”にしていたと思う。
 犬の方は、ワイヤーを張って、鶏に届かない範囲の長さのロープで繋いでいた。詳しく思い出すものだ…
 しかし、本作冒頭たった3ページを読むうち、そう詳しく思い出すことが、そこに書かれている。
 たった9ページの分量である。その三分の一に「静か」が4回出て来る。わずか17行のうちに。
 ここに描かれている場面を、私自身が眺めている。そこへ私自身が入り込んでいる。「こういうことがあって」私は、こういうことを書き止めるであろう…と。
 主人公は卵を集めたりはせず、それが私の内で勝手に作られた妄想であったことが、知れた。(トホホ)

by ihatobo | 2014-09-27 07:37