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『なしくずしの死』(ルイ - フェルナン・セリーヌ 上下巻 高坂和彦・訳 河出書房新社1936→78→02年)

 前回の『突然炎のごとく』と稲葉真弓による阿部薫、鈴木いずみ夫妻に取材した小説(物語)『エンドレス・ワルツ』と同時期、ヒソヒソと噂されていた本の一冊が本書。
 『突然~』は1953年、『エンドレス・ワルツ』は87年と書かれた年は異なっているものの、若者の「自我」の確立と崩壊の物語である。
 後者は同時期(70年前後)の実際のカップルが残していたコトバ、文、録音、日記など著者の取材を基にした小説で、最後の数ページに突然(火の如く・笑)一人称の回想/記述?となって終わる。
 つまり、それまでは、いわゆる客観的な著者がいて各々の会話も事実(取材)に基いて構成されるのだが 最終的には人称なしで続いて来た物語が、ひっくり返されて一人称だが、私たちという意味での複数が、私 つまり著者の書いた物語として終わる。
 後者の初読時は、この二人を知る者として私は読んだのだが読後感がきつねにつままれたようで、なお爽やかだったのを覚えている。
 さて今回は、その阿部が耽読していたルイ - フェルナン・セリーヌの『なしくずしの死』を読んでみようと考えている。

by ihatobo | 2014-08-09 18:14