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『隅の窓』(E・T・A・ホフマン「ホフマン短篇集」)

 丁度ここ一年程になるのだが、私にとってのヒミツの喫茶店を見つけ、通っている。
 何の要素なのか色々と考えるようになったのは、極く最近だが、まず窓があり、表通を眺めていられること。店内も程よく広いこと。つまり、店側の人間としゃべらなくてもいい雰囲気がある。
 エゴ(自我)をいえば、キリがないので、できればアレも欲しい、コレはないほうがいい、とはいわない。決して慎しさを自分で演出しているわけではないし、ほんの20分足らずの自分の時間が欲しいのである。
 窓外を通ってゆく人々を眺めていると、バラバラになってしまった自分が、ようやくまとまってくる。
 何と何がどういう脈絡でつながり、枝葉をつけて一本の木となったのか、それは不明なのだが、しかし、「ようやくまとまって」きた、という風に感じ、表通りに出る。そういう日は、光でも、雨でも美しく感じることができる。風を切って進む。
 そんな短篇があることを『短篇小説講義』(筒井康隆 岩波新書 1990年)で知った。
次回はこの本を紹介したい。


 

by ihatobo | 2014-07-18 23:02