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『ボブ・ディラン ロックの精霊』(湯浅 学 14年 岩波新書)

昨年に続いて来日公演中のボブ・ディラン。
彼がシーンへ登場した60年代は、表現行為とメディア、つまり、ある表現行為がメディア(会場、レコード)を媒介して、一般の人々の支持を集めて成立することの、複雑怪奇さが事実として問題にされていた。
いわく、大衆迎合(商業主義)と、真逆の大衆支持という、ポップであることが、ポピュラリティーとは別であり、その事情が当の表現者に対して「先が見えている」とか、「腰が坐っている」といった評価に分れて混在していた。
ずっと後になって、ボブはそれをポリティカル・ワールド(ワード)と歌うことになるが、それは、ポップ・ミュージックが本来的に孕んでいる本質である。

本書が集めているボブの発言は、彼がその事情に自覚的であったことを証している。
私自身としてはダニエル・ラノアとのアルバム制作となった『オー・マーシー』(89年)の期間の発言が欲しかったが、それはダニエルの『ソウル・マイニング』(鈴木コウロウ訳 12年 みすず書房)を紹介した時に少しだけ触れている(本ブログ 12年1月)

次回は、76年のボブのアルバム『デザイア』に寄せたアレン・ギンズバーグのライナー・ノーツを紹介しておきたい。

by ihatobo | 2014-04-23 20:57 | 本の紹介