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『気象で読む身体』(加賀美雅弘 91年 講談社現代新書)

 店にストーブを出す季節になると、朝、雨戸を開けたときに金木犀のほのかな香りが流れ込んでくる。
 それは例年通りだが、毎年チョコレート・ケーキに添えていたミントが、とうとう今年は育たなかった。
 その代わりに、近所の木々はモリモリと枝葉を伸ばし、ツツジなどいつもの倍ほどのボリュームになった。開花も二度咲き、三度と寒暖の差が出る度に咲いた。
 こうした気象の変化は、身体にどの位作用するのか? ということで積ン読本『気象で読む身体』(加賀美雅弘 91年 講談社現代新書)を読んだ。
 本書はいわゆる“学際”領域の研究を総合しようとする「生気象学」の概観本で、気象学(大気現象の法則)医学、地理、公衆衛生(細菌、昆虫生態学)などの関連、位置関係、を歴史的に概観している。
 この「生気象学」は、医学の祖、ヒポクラテスの『空気、水、場所について』に、いわば先祖帰りしようとする総合科学ともいえる。
 近代になって一方では、物質とエネルギー(物理)の物質的な実証に向かった実験科学と、そこから派生する分子生物学、化学(薬学)を基盤に、自然(環境)に対する人類学、あるいは人間を含む自然“科学”を構築しようとしている、といえる。
 しかし、実は、それが私たちが知っている“風水”なのだ。だから、その文脈では“風水”を科学するといっていい。

by ihatobo | 2013-10-11 10:13