『ウドウロク』(有働由美子 新潮文庫 2014→2018年)

 この奇妙なタイトルの本を読んで、ますます有働が好きになった。ここ数年、私はNHKビイキになっていたのだが、その間中TVには彼女が映っていたような気がする。

 まず、最初の契機が「あまちゃん」。この朝の連ドラは観ていなかったが、音楽を担当していた大友良典を以前から知っていたから、「へぇー」ぐらいの驚きでNHKを気にするようになった。その後、ドラマ嫌いの私を魅きつけたのが「あさイチ」。司会というのか井ノ原快彦と、その横にいたのが有働である。

 ボンヤリとした印象しかなかったのが、本書を読んで、様々なシーンが一挙に繋がって有機的な結合を遂げ、ひとつの有働となって浮かび上がってきた。それは、ひと言でいえば「おきゃん」。

どうも、それが仕事上でもプライベートでも貫かれているようで、仕事はともかく、あり得ないが彼女と個人的に共に時間を過ごす、となると尻込みするだろーなと思った。

 たぶんアタマが回りすぎて、こちらが考える前に彼女から言われてしまう、というようなことに度々、立ち会うことになると思う。

 ともあれ、そんなデキル オトナの女も自分の知っている女と変わらない。色々と先々のことを、考えて大変なのだ、ということを改めて思った。若い年頃の女性に、ぜひ読んで頂きたい。編集者も、そう思ってこの本を送ったらしいし。


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# by ihatobo | 2018-10-12 09:52

『数学する身体』(森田真生 新潮文庫 2018)

 好きな金木犀の香りも、台風が吹き飛ばして、秋が足踏みしている。

 さて、今回は数学好きには、いいかも知れないが、数式、記号ばかりが散り嵌められていると、ちょっと私には苦手本になってしまうが、本書はいい。

私の友人に数学の専門家、学者がいるが、彼女の書いた学位論文を見させてもらったことがある。とにかく、日本語で書かれているのだが、一行たりとも分らない。

文法に沿って読むことは出来るのだが、さっぱり分らないのだ。それはともかく、本書は私には丁度いい。丁度いいとは、著者に失礼かもしれないが、ページを開いてパラパラと読んだ。さすがに内容が濃いので、理解まではいかないが、簡明な用語解説も含め、一気に読める。

帯に建築家がコメントを寄せているように、数学に依って自分(脳)を造って行こうとする本のようだ。この本の、どこが分からないか、というと

―― 仮に作図が出来たとしたら、その作図に必要となるはずの線分に…

あらかじめ、記号を割り振ってしまう。――

という箇所。

(作図を)階段的に実現してゆくのではなく、という前振りがある。この三行でも、冷静になってもチンプンカンプン。チンプンカンプンとは、さっぱり意味が分からない、ということだが、その意味のコトバがすぐに出てくる。

論理の展開なのか意味の数学的表現なのか、ドキドキして読むと、またもハグらかせる。どうしても「使っているうちに、次第に存在感を帯びて、その意味と有用性が分かるようになってくる」という。同義反復のような、更に分らなくなってゆく…

それでも、いい本であることは間違いない。

いくら曖昧なものを定義しようとしても、ちょうど円周率の小数点以下が何桁まで続くのか果てしないように、現代の数学者も諦めがつかないらしい。トホホ。


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# by ihatobo | 2018-10-05 08:49

『東西不思議物語』(渋沢龍彦 河出文庫)その2

 本書の前口上、あとがきで著者が述べるように、本書の内容は古今東西の「不思議物語」。そのうち私の関心は、西洋の物語に集中したが、生まれ育ったこの国の物語は当たり前すぎて、不思議ではないのかも知れない。

「未来を占う鏡のこと」では、鏡をめぐる物語がたくさん紹介されているが、そのことを英語ではフリスタルロマンシーというらしく、欧米では一般的な物語のパターンらしい。「鏡の国のアリス」とかボルヘスの作品にも多く、それが見られる。

 「自己像幻視のこと」では芥川龍之介が、「ぼんやりとした未来に対する不安」と遺書に書いて自殺したのは知っているが、この章に出てくる「影の病」というのも不気味。

 西村博任という、恐らく精神科医の『泉鏡花・芸術と病理』も紹介されている。時代と国を越えてゲーテの著作にも、それがあるらしい。

というわけで、どの章も興味尽きない。「百物語」というタイトルがあるが、本書は、その半分49編が収められている。その意味で、大変お得な内容を持っている。実に、楽しめる本である。


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# by ihatobo | 2018-09-28 10:14