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『デットライン』(千葉雄也 2019-22年 新潮文庫)

 現代思想を復習しようと思って、たまたま著者の『現代思想入門』を読んでいたので、今回は本書を選んだ。

 『現代思想入門』は、ここ100年くらいの関連する著作を概観するものだったので、小説の体裁を取った本作は理屈っぽい。だが、主人公を中心に据えた物語は、事細かに記されていて、ページは異常な速さで進む。しかし、それだけに説得力がなく面白くないし、深みもない。

 学者は、そういうことも出来るのか、という感想だった。

 こういう系列の小説は結構あって、興味関心のある人はドーゾという感じ。得意技が違うが松本清張の方が、私は好き。もっと細部に分け入った方が、良かったのではないだろうか。


# by ihatobo | 2022-10-08 12:15

『for ティーンズ』(「竹取物語」 木ノ下裕一 NHK番組テキスト)

 私は周囲の者から“何を考えているのか分からない”と言われるのですが、何かを考えている訳ではなく、いわゆる“物思い上ふけっている”事が多い。

 仕事中は、のんびりしている訳にはいかないから、その大半は電車の内や自分の部屋、家族との食事時に、そう言われる。

しかし、そのうち大半は以前キチンと応対したことなので、自分で思いだしたらどうだ、と思うのだが聞こえなかった場合もあるから、もう一度声を大きくして繰り返す。すると、なんで怒っているのか分からない、と返される。

つまり、私は周囲から大切に思われているから、私の発言を正確に受け止めようと質問をし、心配していると言うことになるから、会話が湧き違う。

「竹取物語」は、そうやって読んでゆくと“かぐや姫、月、神秘”というキーワードが絡み合って複雑な話になっていることが分かる。

ということは、単純に面白いのだ。なぞ解きと同様に、それまでのデータを材料に、この物語は何を言っているかを探る、という楽しさを持っている、と私には思えるのだ。

 本書の著者は最後に、それだけの裏付けを持って“どんどん物語の中に、逃げ込んで下さい”と書いている。さらに、語源解説のオチも付いている。オスオスメです。


# by ihatobo | 2022-09-06 10:34

『近代日本 150年』(山本義隆 岩波新書 2018年)

 「科学技術総力戦体制の破綻」と副題の付く本書は、タイトル通り近代日本の歴史を並べた歴史物だが、筆者本人が体験した事柄を歴史として対象化しているから、説得力もあり大変分かりやすい。

 それだけではなく、現在の技術万能の世の中を歴史化していると言える。本人が一貫して追ってきた歴史が、そこにうごめいているからだ。これらは、綿密な資料の読み込みから生まれたものだろうが、その量がハンパではないのが読んでいて、よく分かった。

 誠実な行が並んでいる。


# by ihatobo | 2022-08-26 10:34