# by ihatobo | 2021-12-23 09:41
本書は、1989~90年に月刊Asahiに連載された著者のエッセーをまとめて、朝日新聞社から単刊本にされたものの文庫版。巻末に鶴見俊介によるエッセーが付されている。鶴見もアメリカで留学生活を送っている。
鶴見も他のところで述べているが、当たり前に日本語の通じない国での生活は困難であった。著者も同様で、本文はかなり古い翻訳文体。この明治期の訳語による文学/教育活動は、それ故、事実の列記が中心になる。私は、この文体が好きで頭がスッキリと回る。
著者は、津田の英語の話し相手だったアデリン・ランマンとの往復書簡や並段の会話などを、引用しながら論を進めてゆく。それらは、読者である私には、彼の地での生活を想像させる。事実―真実を往復しながら、事実を獲得する、この本のあり方に似ている。
その対象の津田は、今は亡き、彼女の理想とする英語と教育の分野を、突き詰めた作業とも重なるだろう。
昔から、立派な人間はいたのだ、というのが読後の印象であった。
# by ihatobo | 2021-12-19 10:06
本書は、丁寧・親切な執筆を長く続けてきた著者の、ビートルズに関する取材を基にした伝記。
第2章(ジョン・レノンはアイルランド人か)で紹介されているドキュメンタリー映像「ザ・ビートルズ:Get Back」(ディズニープラス11/25~27)を家人に頼んで観たが、その映像のまま、まだ観ぬビートルズが感じられた。
それは、ほんの数秒の事だったが、それで充分、彼らの諸々の事実を伺い知ることになった。その映画同様、本書を読むと私の記憶や解釈が別の角度からのビートルズを、浮かび上がらせてくれる。
事実、彼らの背景には様々な物語が存在していて、“ あー、そういうことだったのだ ” が盛りだくさん綴られている。
その背景のひとつが、歌手の伴奏からひとつのスタイルが形作られたミンストレルズ=ショウで、若い男女の出会いを演出した楽団を真似た音楽形態で、ジョンの祖父が、こうしたバンドで演奏していたという。
祖母も、そのバンドで歌っていたらしく、そうした遺伝子が彼にも備わっている。出会いを求めるのは、どの時代でも同じでアメリカでは、巨大なボールルームという施設が、その役割を担っていた。
イギリスから新世界を求めてアメリカに渡った人々が、造り上げた社会を逆輸入して時代が進むという事も出来る。
95年に発表された「フリー・アズ・ザ・バード」眺めながら、回顧ではない回想を思い巡らせては、どうだろうか。
# by ihatobo | 2021-12-11 08:27