『夜想曲』(カズオ・イシグロ)

著者初の短編集ということで、読んでみた。標題作と「老歌手」から読んだ。私が古いのか、久しぶりに小説を読んだ、という感想が残った。久しぶり、といってもサマセット・モーム、といった小説を教科書で読んで以来という意味である。

その頃に読んだのは、「走れメロス」「山椒魚」「鼻」とか、全て教科書である。それが何故か、小説らしい小説といて、私のなかに定着している。著者も自らの出自が、自分の小説を、生み出しているところがあると、述べているが、しかし、英語で書き始めたことを考えると、それは英文学である。

そんな詮索ではなく、私は文学として読み、久しぶりと感じたのは確かだ。「老歌手」は、長く連れ添った老夫婦の人生の種明かしのような、会話が主な内容。標題作「夜想曲」は老歌手と、若いサック奏者の会話。

ベン・ウェブスターとネルソン・リドルが好きそうな歌手に、若者が合わせてゆく、何とも、これがジャスメン同志の会話、ふたりの奏でるジャス、そのものという物語。

実際、曲を聴いているような良さを感じた。 それにしても、カズオ・イシグロのジャス理解は正しい。良い小説集です。エピソードも、何もかもがジャス的なのです。


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# by ihatobo | 2017-11-17 10:43

『コーヒーの世界史』(旦部 幸博 講談社 現代新書)

 本書、著者の前著『コーヒーの科学』は、新聞広告で知っていたが、そのうち図書館で探ってみよう、くらいの気持ちだった。その記憶があって、書店の新書コーナーで見つけ手に取ってみたら、どうもアレらしいということで、人に頼んで買った。

 コーヒー、とタイトルされていれば大概、手に取るのが私の常である。しかし、開いてみると大著である。コーヒーの「発生」から飲むにあたっての心構えまでが、ここに網羅されている。その心構えとは、歴史を知ること。それによってコーヒーの味が変わる、ということ。

 本書は、豊富な文献猟捕と歴史(世界史)を調べ上げ、それらを有機的に組み合わせた労作。

 関心のない方でも、読んで引き込まれます。面白い。


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# by ihatobo | 2017-11-10 09:38

『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』 栗原 類(2016年 KADOKAWA)

 人は皆幸せになりたい、と願っているはずです。幸せとはなんぞや?から始まり、果たして自分は幸せなのだろうか?と自問したり、幸せは常に身近なテーマです。

 この本は幸せになりたい人が読んだら、間違いなくおもしろいし、ためになる、と思います。

 こうやったらこうなる、という一般論をあてはめるには難しい脳のクセを持つ著者の、なりたい自分に近づいていく姿が具体的に書かれています。

 輝ける場所を見つける、というのは誰にとっても難しいことです。特に、日本で子育てを経験した方なら思い当たると思うのですが、横並びの意識があまりに強くて、とにかく子供には勉強させることが何よりも優先されるのですから、親子共々幸せについて考えているひまなどありません。

 栗原類のお母さんは、20歳で海外に出て、その後、シングルマザーになった方なので、視野も広く、経験もあり、なにより、自分の幸せについて、とことん自分で考え抜くという姿勢で生きています。当然わが子にも、的外れな価値観を押し付けるのではなく、本人の好きな道を歩ませ、そのために脳のクセに合わせて相当なサポートをしてゆきます。

 人のサポートが大切であること、努力をすること、心の声に素直になること、長い眼でみること等が、栗原類のドキュメンタリーを通して、具体的に分りやすく描かれています。

そして、その生活ぶりの華やかさや、ちょっとまねできない行動力、が、栗原家!ならではでした。

大変おもしろかったです。


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# by ihatobo | 2017-10-30 09:06