『流跡』(朝吹真理子 2009→10年 新潮社)

 新春の企画で、ここ20年間のメガヒットした本を挙げて、この期間の時代の様相を概観するページを見て考えた。その中に、本ブログで紹介した『バカの壁』(2003年)が入っていて、若者の養老孟へのインタビュー記事が載っていた。

養老の本は好きで、専門書以外は大体読んでいる私は、読みながら考える事が、たくさんあった。彼は虫が好きで、それ故に野山(自然)が好きで駆け回っていた。

そのことが、素養になっているのだが、インタビューに応えて「(自然は)意味を問う前に、そこにある」という。ヒトは、自分に分らないことはやり過ごし、それに意味も無意味も問わない。ヒトは「意味のない」事柄は自分から遠ざけるのだ。

 それは逆に、自然はヒトを意味のない生命とするようなもので、それこそが問題を引き起こす。

と、新春に考えたこと。以上でオシマイ。

さて、イシグロさんの『夜想曲』の第5番目「チェリスト」をやっと読んだ。この物語も紹介するのに骨が折れ、今回紹介するのは『流跡』(2010年 新潮社)。この作家は、イシグロさんと同様にコトバに対して特別な距離感を持っていて、この本も紹介するのが大変。

だが、とりあえず美しい物語であることは確かである。

次回に、また。


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# by ihatobo | 2018-01-19 09:03

『言葉の饗宴』(岩波文庫編集部 1986年 岩波文庫)

 本書は、カバー折り返しにあるように、岩波文庫の一般読者の投稿からなっている。一日一章句というように、365の引用句がズラリと並んでいる。


 岩波書店は元々、教科書の制作・販売から始まった会社で、「説教くさい」のはいたしかないが、各章句は歴然と輝くものばかり。引用された文は、小説は鴎外、漱石から古今東西の名文家から選ばれている。最も読者の投稿文であるから、その点は選者の意図は入っていない。

 つまり、文盲の多かった時代の文だから、知識層に向けたものであるのは間違いない。しかし、名文は名文、いま私が読んでも感心させられるものが多い。そして、既知の作家であっても、そして引用された本を読んでいたとしても、初めて知る感銘であり、今一度読んでみようと思わせるものが並んでいる。


 読み切ることが目標の読者もいれば、書かれている事柄が自分にヒットして、頭が回転し始める者もいる。本はカタテになっているだけに、様々な読者に応える、ある情報の貯蔵庫である。

人は死ねば、その人の持つ情報は失われるが、本にしておけば、いつか他人に読まれ伝わる可能性をもっている。

この本のタイトル通り、コトバの饗宴である。

齢を取ってくると、こういう本が便利で楽。希望が詰まっている。


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# by ihatobo | 2018-01-12 09:05

『新年のご挨拶』

 明けましておめでとうございます。
 本年も、どうぞ宜しくお付き合いください。

 さて、年寄りが好きな本を見つけたので、ご紹介します。文庫本です。小説を含む、印刷された本から読者が気に入った章句を投稿する、という型式の本。
 面白くて、ついつい読み、考え、自分にあてはめてみます。
 次回に詳しく、お知らせします。


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# by ihatobo | 2018-01-05 10:03