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『モッキンバードの娘たち』(ショーン・スチュアート 東京創元社 2016)

 合計1日で、やっと読んだ本書は、長編というよりは中編である。プルーストみたいな流行作家もいる訳だから。それにしても、長い。読書人としては、真面目すぎ遅すぎるのだ。

 さて、物語はクライマックスを迎えハッピーエンドだった、と言いたい所だが、いくらハッピーエンド好きといっても、現在のアメリカには、そんな勢いはない。それを、反映してじれったい程にうす暗い、ゆううつな感じな結末であったが、それはそれで良としよう。
 それにしても、主客入り乱れる主人公の煩悶は、半端なくかろうじて、自分が保たれて終わる。この件も良しとしよう。しかし、怖い物語である。幾度となく本を投げ出さんとばかりに怯えた。何なんだ、この<乗り手>たちは。この訳語の乗り手だが、おそらくライダーだろうと思う。
 では、何に乗っているのかというと、馬でも車でもない、彼らが乗るのは人間なのだ。怖い。

 気を許して筋を追っていると、その場面の人物にライダーは、乗り移っている。支配されているのだ。怖い。だが、本書は掛け値なく面白い。カナダのシンガー・ライター、マデリン・ブルーの「ケアレス・ラブ」である。主人公トニは、逞しいが可愛い。
 その同じ意味で、もう一曲、著者にヒントを与えたに違いないのだが、トム(ジョビン)&エドゥ(ロボ)のアンジェラである。
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by ihatobo | 2016-03-29 18:40

ヒミツ24号でました!

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by ihatobo | 2016-03-28 00:18

『モッキンバードの娘たち』(ショーン・ステュアート 鈴木 潤 訳 東京創元社 2016年)

 読み切ったら、ということで読み始めたのだが、ぐんぐんと半日で半分まで来てしまった。というのも、物語のメインの家族が私の家族と、とてもよく似ているのだ。両親に娘二人はフツーに同じだが、家族中の各々の役割や力関係が、ほとんど同じである。

 現段階では何とも言えないが、物語はじめを振り返ってみると本書は、とても巧妙に構成されているのが分かる。ただ我が家では、下の娘が母に上が父についていて、この物語とは逆である。些末なことと思われるかもしれないが、少なくとも家庭は、その力関係が大切なのだ。平穏な生活のためには。
 戦後の岩波少年少女文庫の一番「ちびくろサンポ」が巻き起こした騒動を、ご存知の方もいるかと思うが、それはアメリカでも起こったことであるのを知ったし、母子の関係性の問いや子どもの教育や社会他の問題は、他国にあることを、この小説は教えてくれる。

 さて、その家庭の問題のディテールは、本書を読んでいただくとして、本書の登場人物のうち誰が<乗り手>で、どれが普通の人間として描かれているのか、堂々、廻りを繰り返すばかりで、見当が定まらない。
 しかし述べたように、母と娘たち二人の物語であることは確かで、だが途中からもう一人別の娘が登場するが、彼女が<乗り手>なのか普通の人間なのかは、定かではない。
 とりあえず、今のところは姉妹は仲良しなのだが、しばらく一緒にいると喧嘩が始まるのは、我が家と同じである。

 互いを大切に思っているのを、親の私は知っているから、何も喧嘩しなくても・・・と思うのだが・・・姉妹とは、そういうものなのだろう。本作のように、妹の方が一方的にウルサイのだ。
 今回は、この辺りで。
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by ihatobo | 2016-03-25 18:15

『ことり』(小川洋子 朝日文庫 2016年)

 日本でいう “超能力” のある母親と、その娘たち、という「家族物語」を読み始めた。タイトルは『モッキンバードの娘たち』で、6人の霊たちが、各々に霊力を発揮する筋立て。
 モッキンバードはマネシツグミと訳されるツグミで、モノマネをする中型の鳥。英語のモックはあざける愚弄する意味で、命名の理由は大体 想像できる。
 しかし、本文300ページ超の長編なので、読み切ったら紹介するとして、鳥つながりの本書から始めたい。この物語もそうだが、ある動物(鳥類)がカギになる物語は読み始めると、しばらくして “ ははぁーん、こいつがナゾを解くポイントだな ” と勘づくものである。
 恋愛小説における主人公に想いを寄せる隅っこにいる人物が、物語の進行のなかで、ついには主役となってしまうようなものである。しかし本書は、そのカタチにはハマっているものの、一言でいえばアザトイ。

 つまり、小鳥が止まる木の枝はあっても葉や巣が存在しない。本文中の主人公は、カタチ通り消えてしまって、隅っこにいたはずのメジロが残り、寂しい幕切れである。なるほど、本書カバーは木の枝にメジロが一羽と物語に登場したグッズらしき物が吊るされている。
 手慣れた文の流れも、そうやって考えると、歌に関する見事な考察があるものの、大変寒々しい。
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by ihatobo | 2016-03-17 18:02

『モノリス』(エウロパ MIDI creative 1067 2001年)

 梅も散り一瞬春が来る、と高鳴ったが、また冬に逆戻りとなってしまった。冷たい雨。春は、まだ遠い。湘南では、桃を飛び越して桜が咲いた、とTVは言っているのに。上着を脱いだり着たりと、忙しい。
 しかし、この季節になると春秋の彼岸に、相模原常福寺(臨済宗)でトークショーとジャズのライブが催おされる。今回はトークショーに解剖の養老孟、ニュースキャスター、エセイストの阿川佐和子と臨済の僧侶、横田南嶺の三人が、各々、持ち場から “メメント・モリ(死を想え)” をテーマに楽しく!対話をくり拡げる。
 今回は私の関心が燃え上がり、出掛けようと予定している。(4月2日13時~17時 参加無料、予約必須FAX 046-255-3372)境内の桜が、満開になることを祈りつつ。

 さて今回は、ハービー・ハンコックの<イマジン>が日本で展開されたらこうなる、というアルバム、エウロパの『モノリス(一枚岩)』を紹介したい。演奏型式で、その枠内で見事日本的感性と21世紀の時代性が、発見されているのだ。
 単に古い型式の再評価というだけではなく、そこに盛り込まれた感性(フィーリング)がすごい。つまり、エモーションが感じられる演奏なのだ。録音は<イマジン・プロジェクト>よりも9年早い2001年である。
 お店でも、超大量に再入荷しました。オススメです。
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by ihatobo | 2016-03-10 19:02

『ザ・イマジン・プロジェクト』(ハービー・ハンコック ハンコック・レコード 2010年)

 キャンディット・レーベルの紹介をしようと色々考えたのだが、日本での衝撃は『ウィ・インシスト』というマックス・ローチの作品で、確かにビックリしたのを覚えている。
 もうひとつは、チャーリー・ミンガスを中心とした著作で、エリック・ドルフィーやマル・ウォルドロンを知ったのも、このレーベルだった。
 緒作製作されたのは60年代の初頭だが、私たちが知ったのは末期、68~69年だったと思う。
 リアルタイムのジャズ・アルバムはコルトーンが亡くなってからの作品発表であった『トランジション』を始めとする、インパルス・レーベルの緒作品。そして、コルトレーン・クインテットから独立したファラオ・サンダースと、また別の系からアーチ―・シェップ、アルバート・アイラーらが、このレーベルから作品を連続して発表していた。

 ところで、2010年になってからマイルス・デイビスのグループから独立したハービー・ハンコックが、イマジン・プロジェクトを名乗って発表したアルバムを聴いていると、当時の主流派を含む、全てが聴こえてくるのが分かる。ESPレーベル、オーネット・コールマンからマハビシュヌ・オーケストラまでが、鳴っている。
 もちろん、プロジェクト名である<イマジン>のジョン・レノンからユーロ・ミュージック(ワールド・ミュージック)南北、アメリカン・フォークロアと、アジアン・フォークロアまで、音を唯一のポイントにしたポップ・ミュージックが、このプロジェクトによって実現されているのだ。
 ということは、前述の60年代末の西米クラシカル・ミュージックが抱えていた問題に、このアルバムはひとつの方向を与えている、ということでもある。ナット・ヘントとチャーリー・ミンガスがやろうとしていたことも、こんな<イマジン>だったのかも知れない。

 最近は、暖かくなったり寒くなったりの三寒四温ですが、風邪を引かないように気を付けてください。店では、昨年好評だったちくま書房フェアの中から『禅的生活』(玄有宗久)とロマン・ロランの恋愛小説『ジュールとリュース』(鉄筆文庫)を売っています。
 善が冬とすれば恋は春、という訳です。
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by ihatobo | 2016-03-07 16:19

『ぼくらの民主主義なんだぜ』(高橋源一郎 朝日新書)

 「社会の状況への発信は好きじゃない」という文人は多い。とはいうものの、そうした彼らが、あえて直截(ちょくさい)なものいいで、各人が発信することが多くなった。
 世界の現在が荒廃しているのだ。ストレートなものいいは、分かり易く心が動くからだ。そのなかで、本書から教わったコトバは、「哲学的」であると同時に「エモーショナルな問いかけ」がなければならない、ということだ。

 本書は、その意味で11年から朝日新聞の「論壇時評」コーナーに連載された文を集めて上梓された。私が「おっ」と思ったのは、それこそ直截なタイトルで、これはモダーン・ジャズのプロデューサーでもあったナット・ヘントフの小説『ぼくらの民主主義なんだぜ』から採った、という。
 ナット・ヘントフはデビュー・レーベルに集まるミュージシャンを中心にレコードを製作(ディレクション)し、ライナー・ノーツも担当したジャズ人で、彼の仕事は日本でも熱心な支持を集めた。評論集も出している。(晶文社)

 次回は、彼が主催したレーベル・キャンディッドのアルバムを紹介しようと思う。
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by ihatobo | 2016-03-01 17:01