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『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』(ブライアン・フェリー 英バージン 7243-8-48270-2-1 1999年)

 以前は道端にガムが落ちていて、あれはどこへ行くのだろうと思ったものだが、最近は、とんと見かけない。当然あれは、近所の家人が新聞紙か何かで取って捨てていたのだろうが、最近はプラットホームでも見かけない。駅の清掃員が始末しているのかも知れないが、ガムそのものを噛む習慣のある人が減ったとも考えられる。
 最近、私はもらった試供品のガムを噛んで懐かしくなり、それを食べ終わると店で買ってきては噛んでいる。仕事をしていても、噛むのを止めれば なんとなく味のあるガムが残っているから、お客様にも失礼に当たらない。
 ガム人口が減っているのが事実だとすれば、その原因に心当たりが私にはある。それはフロイトの『夢判断』によれば、身体の入口で食べ物などを破砕する歯は男性の象微であり、それを嫌がる、というかその習慣のない女性は、そもそもガムを噛みたがらない。
 そういえば、映画にしろ、現実世界にしろ、ガムを噛んでいる女性は、役柄としての男性を生きていると私は思う。

 さて、ジャズにおいては、その男性(リズム)によるメロディー、ハーモニーの流れを切断し、アクセントを付けることが重要だが、本アルバムでのブライアン・フェリーは見事に、その役割を果たしている。彼は、どちらかといえば女性的な声の持ち主だが、そうした音色感とは別の、ヴォ―カールの入るタイミングやハーモニーを断ち切ってメリハリを付けるのが上手い。
 本アルバムは99年の制作だが見事現在を生きるジャズになっている。全体の印象はスインク・エラのものだが、端々に現代のポップ・ソングの引用が成されていて熱い。アルバム・タイトルのアズ・タイム・ゴーズ・バイでは、なんとビリー・ホリデーを髣髴(ほうふつ)とさせていて、そういえば彼女も当時のホップシンガーだった、と思い出させてくれる。
 是非、お店で聞いてみて下さい。
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by ihatobo | 2015-12-24 19:29

『武術の新・人間学』(甲野善紀 PHP文庫 02年)その2

 著者本来の関心時である武術について、本書には追記という形で一章が付け加えられている。
 それは、手裏剣についてである。シュリケンの発音は知っていたが、手離剣と書いても意味は通じる。あるいは子どもの頃はシュルケントも呼んでいた覚えがあり、追記を読んだのだったが、手の裏に隠す剣であるのに初めて合点した。とすれば、果たし合いの場面で、相手には素手だと見せるのも術である、という事も想像できる。

 有名な切手の図柄だある菱川師宣の見返り美人の振り返り方の解説と、その後に続く「身体論」も充分説得力があってナルホドと私は思った。
 しかし、西米では教会から文化が発信され受信もされたわけだから、本書の端々に禅や神道に関する奴述が見え隠れするのも、もっともだと私は思った。
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by ihatobo | 2015-12-18 09:57

『武術の新・人間学』(甲野善紀 PHP文庫 02年 解説・内田樹)

 本書は、武術全般に対して意欲的に取り組んでいる強者だが、彼本来の武具である刃剣について述べられている章では、刃鍛治の作業の全過程に渡る研究が物を言っていて内容が濃い。
 他に、偶然/必然によって知り合った精神科医についての章では、彼を “ 裏の人 ” と呼んで屈託がない。つまり、それだけ研究研鑚(けんさん)を積んでいるから、表面的な診断で相談者(患者)に病名を名付けても、相談者は信用しない、ということを彼は知っているという。
 医者は、クライアント(来談者・患者)と本当にピタッと心が通じ合ったかな、という時は脳の意識に入ります、と述懐(じゅっかい)するそうである。

 著者は、そうした治療の全過程は、剣術の指南と同等だと考えられる。即ち、前章で述べられる麻雀の達人、櫻井章一や保革の逆転のような政治状況についても、裏の意識が表へ回って時代が変わるようにしたことを、著者は事も無げに分析して憚らない。

 ともかく非常に分かりやすい、しかも高度な身体論な本書である。何しろ歩き方、走り方の変遷(へんせん)までが、述べられているのだから。

 つづく
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by ihatobo | 2015-12-15 09:37

『快挙』(白石一文 新潮社 2013年)

 私が購読している新聞に、1年以上連載されていた「記憶の渚に」が終了し、単行本になるという。
 著者による「連載を終えて」という文が、同じ購読紙に載っていたので読んだ。
 それを読んで、「物語」は人類と共にこれからもあるが、そのことを壊したかったと作者は言う。
 それで興味を持ったのだが、新刊は当然まだない。
 そこで二年前の『快挙』という作品を読んだ。
 帯に「結婚における愛の在処を探る」という惹句がある。「どうせ」とも思うが、買って来た。
 そして今日は、前野健太の新譜『いまの時代が いちばんいいよ』(エランド・プレス 2015年)も聴いた。こちらは次回に感想などを述べておきたい。
 さて、その『快挙』だが、本作では「物語」というかエピソードがテンコ盛りで、著者の前言と併せて想うに、本作を書いていて、嫌になったんだと思う。
 物語はつづめていえば、主人公のふたりが交代で病に侵され、それを夫婦が共に助け合って乗り越えていく、というストーリー。
 亭主は写真家を夢見て出発するが、コレだ、と担った被写体にほれ彼女と一緒になるのだが、そこで挫折、文学へ転向する。
 契期は、妻の病だったり、共に体験する偶然だったりするが、いづれにしても不運を幸運が駆逐して、読者はホッと胸をなでおろすという具合。だが、読ませるのは主人公の亭主の小説家たらんとする軌跡で、いわば出版の種明かし、裏事情の暴露といった趣きで、ハラハラ、ドキドキの連続が楽しい。ハッピー・エンドの物語です。
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by ihatobo | 2015-12-12 15:26

『世界史を変えた薬』(佐藤健太郎 K現代新)

 本書タイトルを見ると「こりゃ、ヤバそう」と思うが、本文を読んでいくと「状況証拠」が集められていて、仮定法というのが、謎解きの如き興味をそそるものがあって、読ませる。心理展開には、仮定法(消去法)が使えるので、説得力もある。

 幾多の感染症を引き起こす、ウイルス(細菌)に対する人々の悪戦苦闘振りの紹介を軸に大航海時代のマラリア(悪い空気)の名の由来、有史以前から存在したモルヒネの由来(アヘンの主成分)などと共に痛みとは本格的に何なのか、といった探究までが述べられている。いわゆる「キワモノ」ではない。

 偶然と必然が互いに交差して、新葉の開発と、その危険性についても述べられている。オススメである。
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by ihatobo | 2015-12-07 11:35

『東京の喫茶店』その2

 本書を、あるポイントで読んでみると私達の店のように、かなり大きいヴォリュームで音楽を流しているお店ではなく、その事に自覚を持たなければ、という思いをあらたにする。
 タイトルにあるように、本書はコーヒーを飲むことに特化した取材、記事本だから当たり前なのは分かるが、私にしてみればコーヒー、本(あるいは日々の日記)、タバコ、音楽はセットになっていて、それをテーブルに揃えて至福の時刻を過ごす、というのが私の事実であるから、本(マンガ)、タバコ、音楽の案内があった方が、より良い案内本になると思った。

 タバコの銘柄別のテイスティグや産地・歴史・逸話なども、知りたい。これらのセットは、どれも嗜好品な訳だから、それを数案内本があっても、おかしくない。それらの嗜好を吸うのは難しいし、他人にトヤカク言われたくない趣きもあろうが、他に酒やファッションにしても、その意味では吸うのが難しくても、様々な雑誌や番組が日々イヤという程、流通しているではないか!

 色々と難しい事情があることは私も承知しているが、缶コーヒーをもっとウマくするとか、何とかなりませんか、という CM もある訳だから、関係者の皆様には何とかなるだろーか、とここで言っておきたい。
 多分、無理だろけど。
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by ihatobo | 2015-12-03 10:11