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『婦人公論3/22号』

 高校の文芸部が発行している小冊子(部誌)を読んだ。
 イマドキのペンネームとタイトルが並んでいる目次と、あとがき風のコメントを読むと、私の頭に危険と幸せが交互に浮かんでは消えていく。
 危険は別のコトバでは著者に対する私の心配ともいえ、これだけのものを書けるのだから、それを踏んで文を書く方向に進む際の様々な困難を想定している。幸せはその方向も開けているのに、それに対する私のうらやましさがある。
 その意味で、お節介だが“編集校正”の情熱が随所で湧き出た。
 詩・和歌を詠む能力のない私は、小説、作品紹介・批評の章を読んだ。素直な読後感をいえば、詩・和歌を含めて爽やかで、しかも「オヤッ」と思わせる着想やトリック、設定、キャラクターもあり全体として面白かった。
 つまり小説嫌いの私は、こうした高校生活を送っていなかったのだ。
 私事として悔恨が残るものの、逆にいえば、こうした小冊子に作品を発表しておけば、◯☓文学賞とは無縁に読むものを楽しませることができるし、作者と読者の交流が生まれるのだとも考えた。
 それは先頃、文学賞をもらった黒田夏子が、ほとんどそのことだけを各々のインタビューで語っているのと同じだ。作家の“文学”的学為と読者や批評家との交流は別のことだと私も考えている。
 さて今回は、そのインタビューのひとつを掲載している『婦人公論』(1370号)『ラジオのこちら側で』(ピーター・バラカン、岩波書店)『僕たちが聖書について知りたかったこと』(池澤夏樹、小学館09→12年)を読んだ。
 『ラジオの~』は慎ましく、ひっそりと作業を続けるDJの孤独がうかがえて、私たちの店の選曲、演出作業と重なる部分もあり、参考になり、共感もできた。
 『僕たち~』は碩学、秋吉輝雄を迎えての『聖書』を解読する対談で詳細は次回に。
 そして『婦人公論』の特集「親の人生を揺るがす子どもの“自立”」も次回詳細を紹介したい。冒頭の文芸部の“部誌”にまつわる“危険”と“幸せ”がここでも繰り返されているからだ。
 要は、オーナー・シップ(当事者)能力にかかっている。
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by ihatobo | 2013-03-31 18:48

『ビブリア古書堂事件帖 4』(三上 延)

本作品がシリーズになったのは知っていたが、既に4作目である。
新聞の新刊紹介が私の主な情報源なので、本書を教えてくれたのは
店のスタッフである。本作も一気に読んだ。面白い。
前半がやや解説的で読み飛ばしたが、後半はグイグイ引き込まれる。
そういえば、語り手である大輔クンと栞子さんの
ほのかな恋心の行方は?という興味が、第一作の要素であった。
その恋心は、本作でどうも成就されそうな展開になっていて、ホッとした。
 しかし、本作のメインテーマは、江戸川乱歩による
匿名性、多重人格といった近代人の心理状況の記述である。
 それは偶然でもあるが、前回の『不穏の書.断章』
(フェルナンド・ペソア)のテーマと重なる。
前回作が、破滅の危機を掠すめながら、それでも断片的に
書き記した行為だとすれば、乱歩もそれを知りながら
物語を宙吊りにするために、奇想を練り上げたのだろう。
 やはり、両者とも、書き記しておくべきだ、という確念を
持っていたに違いない。
 本作の『ほのかな恋心の行方』も、破綻の可能性を含んでいるかも知れない。
乱歩による「うつし世はゆめ よるの夢こそ まこと」が度々引用されている。
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by ihatobo | 2013-03-18 22:14 | 本の紹介

『不穏の書.断章』フェルナンド・ペソア (平凡社)

 ある日の店には、夕暮れになってもお客様が訪れず、
その替わりに夕墨から忍び込んでくるのが”倦怠”である。(あぁ.イヤだ…)
「夜が窓からハミ出してくる」と書いたのは安部慎一だったか、
つげ義春だったか、「悪い夜」がやってくる。
 そうして、相対的に店内が丁度良い明るさになると、その”倦怠”に、
いつの日かのそれが吸い寄せられて今夜のそれと重なる。
”倦怠”の二重、三重である。
しかし、フェルナンド・ペソアが書くように
それは幾重に重なっても重くはない。
ただ、底知れず深い。
虚無、無名性、仮装、他社、王国、インターバル.鏡の如き
不穏なコトバが、それ以上に不穏な語り口で延々と綴られる。
 処々 読み取れる文があるものの、全体を通じて破滅の危機を
掠すめながら行は進む。
 しかし、本書は本ブログのメイン・テーマである〈サウダージ〉の
もっとも詳しい解説書の一冊である。
それは、懊悩や侮恨の段階で感じられるある”高さ”なのである。
カエターノ・ベローゾらがペソアの名を出して、本書が再版され、
今回はその改訂、増補版である。
1935年に亡ったペソアについては訳者あとがきに詳しい。
「自分であるのは 仮装しているときだけなのだ」と彼は書く…。
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by ihatobo | 2013-03-11 23:45 | 本の紹介

『節電母さん』 原作 アズマ・カナコ 漫画 もりた しずく (集英社)

朝刊一面に掲載された記事を読み、新聞も変わったなァと
感じたものだったが、その主人公 アズマさんの生活術を原作とした
“実話コミック”が出版された。
その新聞記事を読んだ去年七月、本ブログで紹介したのが
”ゼロ円ハウス”を自分で造った、という『独立国家のつくり方』
坂口恭平(講談社現代新書)だった。
読んですぐこの本を想い出したが、どちらもカゲキで実行するには
決意がいるなァ、と思っていた。
しかし、どちらもモデル・ケースとして、私は称賛したい。
というのも、私達の店も、「無くて済む物(品)」や道具(ツール)、
代替えができる新製品にはまどわされないようにしているからだ。
「本当に新しい物は、時が経っても古くならない」
『東京物語』小津安二郎は、私達の店と同じである。
常に新譜と新刊を追って35年を経た店は、すぐに流行遅れに
なるものには、頓着している余裕がない。
つまり、現状の維持、メンテナンスで毎日忙しい。
便利なものは頼りにならないから、ハイ・パフォーマンスで乗り切る。
忙しい。
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by ihatobo | 2013-03-06 01:52 | 本の紹介