<   2013年 01月 ( 2 )   > この月の画像一覧

『三島由紀夫』(ジェニフェール・ルシュール 鈴木雅夫・訳 祥伝社新書)

 作品自体が<美>を実現している、といえば(噂に聞く)川端康成、三島由紀夫だろう、ということで"積ン読"しておいた本書を読んだ。ガイド本の積りであった。
 著者は『花ざかりの森』の荒筋を紹介しながら、海、恐れ、憧憬、恍惚、死といったコトバを使って、「身を灼き焦がす憧憬は、ただひたすらに美へと向う」と書き、「美の本質は恍惚だ。そして、その恍惚の先には死がある」と続ける。これだけで読んでみたくなるのは私だけではないと思う。作品ごとに述べられるこの荒筋は、簡潔で作品に対する先入観をとり払ってくれる。
 三島自身、出版に限らないメディアや集会、講演を含んだ表現一般に関心を持っていたのにも起因するのだが、同時代を疾走していた彼についての噂話は、少なくとも私のような小心者を彼の作品から遠退けたように思う。
その荒筋の他に三島の豊富な消息文、編集者らの記述証言が参照されていて、ガリマールの新評伝の一冊としてその生涯が淡々と綴られている。その詳細な記述の内容は、私自身の同年(18才〜45才)を顧りみると、節々で思い当る人生を彼も生きていたのが分り、ぐっとその存在が身近かに寄って来て嬉しくもあり、気持ち引き締まる思いがした。

そして、今回の芥川・直木賞の受賞作が、ここ3〜4回こだわっていた文字、ネットにあふれるハダカの文字に纏る作品らしく、それも読んでみたいと思った。
[PR]

by ihatobo | 2013-01-30 15:26 | 本の紹介

『一月物語』(平野啓一郎,新潮文庫,99→02年)

 前回に続いて平野の第二作『一月物語』(96年)を読んだ。
 元来小説嫌いの私が、現在の作家を続けて読むのは珍しい。何故嫌うのかといえば、面白くないからで、我慢して(奨められて)読んで、やっと何かを受け取る、というそのプロセスに耐え難さを感じていた。
 しかし、『決壊』は面白かった。で、デビュー作と思ったが、評判が先行していたので本書を読んだ。面白い。つまり、新しい娯楽を見つけて、嬉しい、という感じ。

 と、同様に様々に私に溜っているコトバが立ち上がってきた。(近代)小説は人々の「心の空白」(吉田健一)を埋めるものだし、それ故に単体(独)としての「個人」の有り様、つまり、人生や世界観を、印刷された物体として提示している。
 そのなかで、手の届かない対象、いかようにも扱い難い"美"を、平野は本書で綴っている。
 逆にいえば、小説でしか"美しさ"をいい表すことはできないのではなかろうか、とさえ思われた。
 視覚(光)に訴える作品は確かにあるのだが、光そのものへ、時間そのものへ届かんとするには、やはり、こうした作品でしかないのではないだろうか。

 ところで、本ブログ(12年7月)大絶賛の『ビブリア古書堂 事件手帖』原作のTVドラマが始った。かなりアレンジされているが、次回が嬉しみであった。(毎週月曜 21:00より フジTV)
[PR]

by ihatobo | 2013-01-17 12:06 | 本の紹介