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"気になる”新譜3枚

“気になる”が特にピンときたわけではないアルバム、というのがあってこのBlubellはその種類。だが店にはこの種類が、流しているアルバムの背景を作るので大変重要でもある。
 当番がハネて客席で知人と会話を楽しんでいるような場面で、フッと「コレ何だっけ?」とスタッフに問い合わせるのもこの種類のアルバムである。 
 さて、今回のイチオシはアレスキ・べルカセムの40年振りの新作。もちろんあのブリジッド・フォンテーヌ=アレスキの当の本人。
 その期間、もちろんクラブでは歌っていたであろう“健在”振りを感じさせる安定した楽曲ばかり。タイトルを辞書でひくと「愛の凱旋」である。そのとーり♡
 丁度彼の出自である。アルジェリア系フランス人が問い合わせてきて、「あーベルカセム、?のバルべル家のね」と当方は初めて知り、なるほどあの『ラジオのように』(71年サラバ)はそれだったのか、と納得した。
 アラブ・ミュージックの基本は9拍子、11拍子で、歌詞内容は「叙事」である。日本でいえば講談の演者がバンドを持っていて、聴衆はそれで踊っているようなものだ、と考えてさしつかえない。(多分)
 更に、その9が6+3、11を8+3に解釈すると、あの魅惑のダンス・ミュージックが少し解かるよーな気がする。
 本アルバムはそのアラビアン・ポップである。良い。
 もう一枚、こちらも少なくとも20年以上の期間をおいてソロ・アルバムを出したアーロン・ネビルの新作、『アイ・ノウ・アイブ・ビーン・チェンジド』、これも良い。何故か去年の録音というクレジットだが新譜です。
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by ihatobo | 2011-06-22 10:49

『道元』和辻哲郎(河出文庫)

 和辻哲郎による『道元』が出版された。初出は1920~23年。「日本精神史研究」(岩波書店)に収録されたのが1962年。
 和辻は『古寺巡礼』『風士』などで知られる哲学者だが岡倉天心に仏教美術を学び、西田幾多郎と共に、日本における思想を同時代の西欧思想、知の体系に位置づけようとした。
 「思想」の語感は堅苦しいが、相当する英語はソーツであり、思想家はシンカーThinkerであることを思えば、ベンキョーやアンキのそれは対象ではない。
 しかし、最近よく使われるように本書の内容は「分り易い」ものではない。コトバの指し示す内容を把握し、「考え」ながら行を追わなければ、ことのつまり「楽し」くない。
 道元の著作は特に難解で、何度も挑戦するが同じ回数を挫折してきた私だが、今回はよく分った。
 いわゆる「真理」や「本質」の構築に向かって論理的に記述していくのが哲学だとすれば、道元は「真理のために真理を体現する」
 つまり、記述や思考のみならず「真理それ自身の顕現」を目指し、実現している。
 私たちの店の日常に置き換えれば、いわゆる“良いお店”がある「真理」だとすれば「永遠に現在なる価値の世界」の「力強い顕場」を彼は実行した。
 だから、それを記述することは至難であり彼が提起した“禅”は、「不立文学」をいい、「不可視」「不可説」をいう。
 そして、「最も個性的な、また最も神秘的な、不可説の瞬間」が店にも訪れるが、それは店の全体に通ずる“普遍”ではなく、有限でその場限りのある瞬間でしかない。
 その事情を「考え」ながら読んでゆくと、店の全体が見え、そして「得道」(ゆくべき道を実感できる)することができる。
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by ihatobo | 2011-06-18 10:43