<   2011年 03月 ( 2 )   > この月の画像一覧

『円卓』

 地震をはさんだ一週間を、西加奈子の『円卓』(文芸春秋)と須賀敦子の『コルシア書店の仲間たち』(文春文庫92→95年)で乗り切った。
 新聞書評で気になっていた西だったが、丁度新入スタッフの面接で名前が上がり「私、読みました」ということで借りて読んだ。
 するするとページは進んだが、主人公がいうように芸術性があり、というよりも本書は芸術としての小説である。美しい。矛盾していない。
 しかし、その物語の中から唐突に作者自身が直截にメッセージを語る場面もあり、『ジヤリン子チエ』を思い出した。同じ関西弁だし。物語の終盤やはり唐突に鹿が現れる場面が美しい。
 作者は経歴に中東地区で幼少を過ごした、とあるが登場人物も国際的であり、生命的な動植物や食事に関する記述も美しい。
 父親が主人公とその友人に込み入った社会の仕組みを、いちいち丁寧に諭す会話も機微に富んでいた。
 一方須賀の物語の舞台はイタリア北東地域である。イタリアが植民化していたエチオピアも出てくる。
 前回、前々回に触れたジプシーたちの居住範囲でもあり、『反音楽史』の主要な舞台である。
 そのミラノの書店をめぐる人物住来記である本書は、しかし、70年代初頭まで続いた“カソリック左派”と呼称される、行動する知職人たちの社会運動の記録でもある。
 私たちの店も書籍、CDを扱っているので、企画・出版・販売も作業していたこのコルシア書店の物語に、大変親近感を覚えた。
 この本も美しく、そしてこちらはしづかな本でもある.
[PR]

by ihatobo | 2011-03-18 19:01

『男と女/NHKスペシャル取材班』

  『女と男/NHKスペシャル取材班』(角川文庫09→11年)
 本書の副題に~最新科学が解き明かす「性」の謎~があり、それだけで私の本書に対するフィルターがかかるのだったが、そのフィルター(科学の事実の脚色された解釈)はそのまま読後も残ったにせよ、楽しく読めたのも事実だった。
 前文の( )内は偽宗教の“信者”用に配られるパンフレットの主要な論法であり、そこに“教祖”の体験が一気に“普遍化”されて織り込まれている。
 居酒屋には大抵ひとりはそういうオヤジがいて多岐にわたる事実を知っており、その解釈を限定された範囲で体系化して、一気に“普遍”を主張する。話題は生死、人生やカミであり誰も反証できない。大概は徐々に居合わせた者が苛立ち大ゲンカになる。
 と、それはさておき、さすがに“Nスぺ”だから、ゆっくりと、短絡しないようにページは進むが、視聴者の潜在的な知的要求に対応しようとするあまり、科学の事実が盛りだくさんで各取材のポイントを絞り込んでいても、専門分野には喰い足らず、一般には画面がないと端折りすぎ、と受け取られそうな内容である。
 しかし、事実は充分に信頼できる形で紹介されているので、実体験と照合しながら読めば、自分だけの体験が相対化され、特に第三章(すれ違う2人、恋の賞味期限と男女の未来)など、それが経験へと格上げされる。
 しかし、居酒屋のオヤジではないが、確かな経験を築いたとしても、男女の対面は常に互いにすれ違うものである…。

   地震の際は、たくさんのお客様より、お見舞いいただきまして、
   ありがとうございました。
   お店は大丈夫でした。
   皆様も、この非常事態に、守られますよう、お祈り申し上げます。
[PR]

by ihatobo | 2011-03-15 19:05