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『学校で教えてくれない音楽』(大友良英 岩波新書 2014年)

 前回、紹介した堀田さんは、ヒトに何かを教えたくてモノを書いていたわけでなく、自分に溜まっている文(文字)を各々に関係付けるように文章を作ってゆく、というやり方だったが、これは音楽に似ている、と読みながら思った。

 本ブログでも何らかの本を紹介し、広めようとしているのではなく、これだったらあの本、この本ならまず、あれを読んどかなきゃという具合に、引き継がれているのであって、他に意図ではない。鴎外が作品から受ける印象とは裏腹に、女性を難詰する手紙を友人に書いたように、文士も公私は別々にあるのだが、音楽家もまた、そうである。

 それは詮索ではなく、音楽自体が作品として成立(公)しているものと、それ以前、以外の音楽(私)とがあるものだからである。

 本書は、ライブやコンサートで知り合ったミュージシャンや聴衆を招いて、会話を重ねたり、時々のライブの場を振り返った記憶の記録。あるいは大友が、立ち上げたオーケストラのメンバーとの記録の確認。それらは部外者である私にも、思い当たる事柄が述べられていて、大変興味深く読んだ。

 章タイトルは 1、音を出す2、うたってみる3、学校じゃないところの音楽4、学校じゃないところで教わった音楽 となっていて、上述の文字と文章のように、歌と声を出す事の違いと同等で、音楽とは何か、うたとは何か、という本質的な問いにまで迫っている。

 大友さんが精力的に音楽活動を展開してきたことは、本ブログの読者はご存じだと思うけれど、本書を読むと、それ以上に距離の移動も含めて、手法としても限りなく、あらゆる手を尽くして自身の表現意欲を発散させていることが分かる。しかも密度が高い。

 そういう訳で、かなり異質な本になっている。

 編集者が、よくここまで総めたものである。


by ihatobo | 2018-12-07 10:52