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『よく聞け!おまえはバカじゃない』(吉野敬介 小学館文庫 2006年)

 暑さのせいか、何をするにも面倒で憶却。と、しかし、何でこの感じがメンドーでオックウなのか実は分らない。経典か漢籍を辿れば、その語源などが分かるだろうが、私たちは、その意味する心の状況を知っている。暑くなくとも、面倒で憶却なことはある。その最たるものが受験勉強だろう。

 そこで、受験勉強のプロ、代ゼミの講師による本書を買ってきた。本書はオモシロイ。励まされ、癒される。ありがたい本だ。

 講師の本だからといって、参考書であるとは限らない。その参考書を使って、どう受験を突破するか、が、ここで述べられている。まず、逆説のタイトルで癒される。自分の誇りを想い出される。

 “たかが、受験で燃え尽きてどうする”

 “おまえたち、管理されてラクしたいんじゃねぇの”

 最終章で「わずらわしくても親は親」となり、副題に「ウザイ日常を乗り切る方法」とある。

 老人のうつ病気味の私にとっても、何かのせいにするのではなく、自分を含めた身のまわりで起る様な事象について、面倒がらず、遂一対処することにも通ずる「教え」が述べられている。「教え」といっても教条ではなく、彼が実践で得た玉のような貴重な「教え」である。

 著者が述べる事柄には、自らの実体験がある。それを学生や読者に伝えたいのだが、直接、授業を作るのは大事(おおごと)である。「倫理の壁」があるのである。自分で見ず知らずの他人に、何か一つでも伝えたい、と考えてみれば理解できると思う。大事なのだ。

 巻末の解説で、政治家の杉村大蔵(彼も吉野の読者)が、そのことについて書いている。

 暑くて元気のない方に、読んでもらい本である。あと鬱の方にも。


by ihatobo | 2018-08-10 08:45