『愛と苦悩の人生』(壇一雄、野原一夫 編)

 本書も再読である。もうすぐ桜桃忌でもあるし、加えて玉川上水にちなむ井の頭(恩賜)公園の開園100年ということで気になった。
 本書は壇一雄と野原一夫による評伝本で、太宰の作品と彼の日々をよく知る二人が、作品の中の記述と重ね合せながら、太宰の人生を語った共著。一言で、その人生をいえば「ヒトに笑われる」人生だった、と私は思った。決して誉めていうのではなく、笑われる、こんなんじゃ、という。

 しかし、ヒトに後ろ指さされる人生ではなかった、と。中学の頃に彼の作品を教科書で読んでいた。確か『走れメロス』。内容は覚えてはいないが、何やら説教じみていたと思う。そんなことより、私が中学の時分、メルボルンでオリンピックが開催されていた。騒がれていたのは、そのせいかマラソンだった。体育の教師が、いつになく張り切っていたのを覚えている。
 しかし、都心の学校だったから、彼が奨めたのは山登りであった。ともあれ、日本の60年代はそうした体育ブームであり、それが現在にまで尾を引いているのではないだろうか…

 目標は鍛練ではなく、脂肪を減らすことに変わったが。しかし、本書タイトルである「愛と苦悩の人生」を太宰は生き、随所に、その彼らしい繊細を散りばめている。更に、それは私たちの細かさ、弱さを彼は知っていたのだ、と思った。同時に、力強さも彼は持っていたのだ。
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by ihatobo | 2017-05-06 10:40