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『幻滅と別れ話だけで終わらない ライフストーリーの紡ぎ方』(北山修 吉本ばなな 朝日出版社 2012年)

 この長いタイトルに嫌気を感じながら読んだが、あとがきにこの二人自身が北山は嫌だ、吉本は馴染まない、と話し合っている。分らなくもないし、名前をめぐる違和感は誰しも感ずるが、二人とも表現者らしく、自分というものに誠実だ、と私は思った。

 本書は精神分析医である北山が、まず学生にするように講義を行い、吉本がそれに質問し応答する、というカタチで構成されている。途中理(工)系の北山らしく、同類のサン・テグシュペリ(「星の王子様」で有名)の文「愛することは、お互いに顔を見せあうことではなくて、一緒に同じ方向を見ることだ」を紹介している。

 彼は精神分析医なので、それを「共視」という用語を使って解説している。と同時に、分析家は患者が彼の「内側」で見たり聞いたりしたことを、分析家の前や人前で披露するものだから、分析家はたくさんの物語、絵、シーンなどをストックしている。

 そのなかで、前述で「一緒に同じ方向を見ること」というシーンを、小津映画『東京物語』の中に見つけ、同時に示してもいる。

 そして、それを紹介していたのが批評家、小説、学者など多面な顔を持つ連見重彦で丁度、彼の『伯爵夫人』(新潮社 2016年 三島由紀夫賞)を読んでいたので、互いにあい通ずるものがあり、次回、詳しくお伝えしたい。

 様々な知性があるものだ、ということが分かると思うので。


by ihatobo | 2018-02-09 15:07