『ヴェーユの哲学講義』(シモーニュ・ヴェーユ・著 渡辺一民/川村孝則・訳 1996年)

 本書を知ったのは、40代後半になってからで、もちろん学生の頃に、書名と著者の名は、どこかで見聞きしていたから、文庫になったのを絜機に買ってきた。
 最速、読むには読むのだが、そもそも恩寵(おんちょう)の概念が分からないから、さっぱり内容を掴めなかった。今回は、いくらか理解が進んだが、いわば文系女子が物理学の基礎概念である「重力」を扱ったわけだから込み入っている。

 たとえば、第一部には「感情における身体の役割」の章があり、その身体が反射と本能に依っているとして、その各々を定義して論を進める、という、いわばメンドーくさい。
 しかし、最初に述べるように「ことば」に対する強い執着があり、「記号」について、その体系について深く考察を重ねたことが、伺われる。
 もうひとつには、「身体」の相対化、それを軸にした生から死、地球から宇宙の発生、心理学、社会学、経済、国家へと各々を常に「身体」から発想し、分析してゆく。最終章に審美的な感情についての徹底した探求を配して、「勇気」や「自殺」、思いやりといったテーマにまで及んでいる。

 今回の岩波書店版では、こういった込み入りが、解きほぐされているのだろうか、また買ってみようと思う。
 何か様々なことを、思い起こさせる本である。
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by ihatobo | 2017-04-21 09:43