『袋小路の男』(絲山秋子 講談社文庫 04→07年 その1)

 本書が噂の作家、絲山秋子である。彼女は、06年『沖で待つ』で芥川賞に輝いた。本書表題作が、川端康成賞受賞なのだが、前回、名前が挙がった河合隼雄の本を紹介しておこう。


 興味があって『昔ばなしの深層』から読んだのだったが、それは表紙装丁が私たちの友人である鈴木コージだったのが、主な動機だった。他に必要があって、新曜社の『心理療法』(単刊本時は『心理治療法論考』)を読んだ際には、“心理療法家は、自分の一番弱いところで勝負する”という文が印象に残った。

 同書は当店の自主本シリーズで、話を伺った熊野宏昭から教えてもらった。熊野は、その後、大学で教えながら自らが、内科医として病院に勤務している。河合さんの本では、店を運営する際の心構えや事が起こった時の対処法など、たくさんの事柄を教えてもらった。


 さて、絲山だが彼女も作家なので、人間関係に関する心理の動きを河合さんに学んでいると思うが、むしろ作品に溶け込んでいて、見分けることが難しい。

 しかし、ストーリーの要所で出てくる、猫、ジャズ、ジャズ・バー、タバコ、病院など私の興味をそそる単語があって、親近感を覚える。ただ、タンカレーにはライムの方が合うし、スライスより月型カットの方が、この業界の常識である。

 それは、ともかく本作品の基調を作っている「距離感の論理」(松浦寿輝)には、シビレルのだ。

 オススメ小説である。



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by ihatobo | 2017-08-09 09:12