『あひる』(今村夏子 書肆侃侃房 2017)

 前回は、建築家の小説 / 物語だったが、今回はフツーの小説。しかし、物語の専門家、河合隼雄さんの名を探した河合賞の受賞作である。

 物語と小説はどう違うのか。明確ではないが、前者は造り上げた文の連なり、虚構ともいえ、後者は日本語のおはなし、語られるもの、私はとりあえずそう区別している。つまり、時間の外に出てストーリーが進むか、リアルタイムにストーリーが進行してゆくかの違いだと思う。


 そういう意味で、本作品は小説であり、読んでゆく最中に色々と想像力が働いた。主人公のあひる・のりたま(ガッちゃん)は、望んだ訳でもないのに、この家に引き取られて、近所の子どもたちの人気者になっている。

 しかし、急な転居と、そうした訪問者たちに囲まれるストレスで、食欲がなくなり、あえなく死んでしまう。のりたまは、転居を楽しんだろうか、それとも苦しんだのだろうか。哀しい結末である。

 のりたまと名付けられた、いきさつは?年齢・性別は?おじさんはどう思っただろう?と、色々と考えた。

 哀しい話ではあったけれど、ほんのりと愛しみの伝わる読後であった。

 小説は新刊を読むと、他の新刊も、読んでみたくなるものなのだろうか。


[PR]

by ihatobo | 2017-08-04 09:04