『それでも前へ進む』(伊集院 静)講談社 2009-11年→14年公刊

 いつもの著者による“大人の流儀”シリーズとは違う番外編、といった趣きがあったので遠慮していたのだが、古本屋で見つけて読んだ。

 軽い気持ちで読み始めたのだが、これが濃い。番外どころかシリーズのエッセンスとも呼ぶべき内容で、一気に読んだ。帯にあるように、「すべての大人たち必読の一冊」である。特に私たちの世代、団魂の世代には親兄弟に対する、心構えの書として恰好の書である。

私たちの世代は、常に不安であり、余裕がない。それに向かって著者は、エールを送る。現代は様々なものが「見える分、すぐその先のことを想定しまう」ことで、それらの不安や余裕のなさが増産されてしまうこと。

 死に対する不安には、「人の死というものは、二度と会えない、ということであって、それ以上でも以下でもない」という先達の言葉をひき、弟の遭難死に対しては、「今、俺とお前が助けに行けば、二人とも死ぬ」という父親の言葉をひく。

 映画『チェチェン アレキサンドラの旅』からは、老姿のセリフ「あなたは、まだ若いから知らないでしょうが、哀しみにも終りがあるのよ」。それでも、前に進もうとする著者は、「朝起きて、することがない人生は、やめなさい」と書き、「仕事とは何か」と問う。

 自らの、矜持を正す言葉や若者に対する文もあるので、次回に。古本屋を、まわれば見つかるはずです。是非、読んでみてください。


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by ihatobo | 2017-06-30 08:48