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『不隠の書、断章』(フェルナンド・ペソア)思潮社→平凡社 2013年

 もうすぐ夏至が、めぐってくる。あっという間に夏。

 今年は梅雨入りが宣言された翌日が晴れ、いまだに雨らしい雨は一回きり、しかも梅雨寒を越えた寒さに震えあがった。

さて、今回は、フェルナンド・ぺソアの『不隠の書、断章』。訳者によるあとがきには、「縁、旅、巡礼、自己の探求」こそが、ペソアの文学上のテーマである、と述べられている。実在する詩人、フェルナンド・ペソアは1888年のリスボン生まれ、双子座。

家族の都合で、南アフリカで幼少を過ごし、17歳でリスボンに戻る。その為に英・仏・ポルトガル語に堪能で、詩人として1935年に生涯を終えるまで様々な「異名」を使い各々の文体を確立して、多重人格な作品を制作した。

 その多重人格は、ペソアには込み入った意味を持っていて、ポルトガルという国の精神性を一言で表すならば、サウダーデで、彼はそれを生きた、といってもいい。

 前に、「縁、旅、巡礼、自己の探求」と訳者のコトバを引いたが、このサウダーデは、本書でも「郷愁」「宿命」「悔恨」と訳し分けられて、話は飛ぶがグルジェフ経由でキース・ジェレットが、国内でも新田次郎が、このサウダーデに魅せられて遠くポルトガルまで探求に赴むいたのは、以前このブログで紹介した。

 ポルトガルの民謡、ファドがこの事情を繰り返し唱っている。

 本書はその後、増補改正されて、平凡社ライブラリーに入った(2013年)が、この版の方がいい、絶対お得である。「構成要素の分らない調和」この調和は、ハーモニーである。「浅眠(パーリセ)」「自伝の断章」「無関心の創造者」「東洋(オリエント)」…

 これらのフルーズ、コトバが延々と続く…

 という訳で、今回も最後まで辿り付けなかった。それでも、あと4割は残っている。また、いつかの楽しみに取っておこう。


by ihatobo | 2017-06-16 10:36