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『人は どうして老いるのか』(日高 敏隆)その2

 前回の『カラス屋の双眼鏡』(松原始)の紹介文を書き始めた頃、ちょうど中国でシノサウロプテリクスという恐竜の化石が発見されたのを知ったのだが、この恐竜は羽毛に覆われているらしい。
 恐竜は、鳥とワニの中間のような動物で、2億130万年前から1億4500万年前のジュラ紀にペロキラトプスという肉食恐竜系から鳥類が進化したという。
 発見されたのは身長が約1mで、随分と小柄。イラストを見るとカタチは恐竜だが、なんとなく鳥を思わせる動物で、『カラス屋の~』でも触れられていた鳥の先祖説が、実証された衝撃的なニュースである。

 さて、人間の“老い”に戻ろう。
 ヒトは「どうして老いるのか」といえば、結論としては、ヒトという種の保存と発展に必然だから、ということになるのだが、ヒトには「ミーム」という「名を残したい」とか「名誉が欲しい」という欲動があり、利己をさらに現実的に考えると、そうした強欲によって生きている、とも解釈できるという。
 それはヒト自らが、自分を家畜化してきた故だ。つまり、本当は動物なのだが、自分に敵対する動物や飢えから、自分たちを守ろうとして家屋や社会を造ってきたからである。安全、安心であることは、人から野性を奪ってしまう。そういうわけで、ヒトは社会や、本当の自分を抑えてウソの自分を必死に造ってきた。

 その人生のなかで「嘘は、ときに人生に花を咲かせるが、その花は実を結ばない」(スペインのことわざ)。たとえ美しい時間が訪れたとしても、実を結ばなければ、子孫を残せないのである。意味が、なくなってしまう。
 その他、年齢による情動の活性/不活性の差が、不倫の背景にある、とかいうどうでもいい話も。あと、エティット・ピアフが捨てられていたパリのベルヴィル(貧民街)という街があるが、そこを舞台にした『ザ・トリプス・オブ・ベルヴィル』というアニメ映画がある。そのサントラ盤は、とても良い。
 私たちの店の小さなヒット・アルバムである。

by ihatobo | 2017-06-05 09:09